Peter Van Hoesen - Perceiver

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  • サウンドデザインとプロダクションのそれぞれの領域にあった壁が、これほど薄くなったことはないだろう。ASCの液体的なサウンドスケープにしろ、Shlomoの繊細きわまりない音色にしろ、プロデューサーたちはテクノロジーを武器にその限界を押し拡げ、リスナーに未知のサウンド体験を提供する。そのアプローチはこのPeter van Hoesenによるセカンド・アルバム『Peceiver』においても同様であり、そのサウンドはTime to Expressのボスとしても知られる彼のこれまでのスタイルをさらに押し進めたものである。彼は依然としてテクノを手掛けてはいるが、そのテクノには彼のデビュー・アルバム『Entropic City』での乾いた薄皮のような質感はもはやもう存在しない。これまでのぼんやりとしたストーナー的サウンドのかわりに、この『Peceiver』はよりクリーンに、よりオーガニックで腐食感の少ないサウンドを展開している。擦り切れた粗いサウンドのコラージュはどこかへ吹き飛び、ひたすらウォームな空気感がこのアルバムを覆っている。少なくともアルバム前半までは。 実験的な色合いが強いこのアルバムだが(PVHはこのアルバムをよりサウンド・リサーチ的な性格の強いものとして制作している)、アルバム全体の調和性やダンスフロアー的な要素が犠牲になっているわけでは決してない。実に巧みな構成によって、新たなアプローチへの転進を示していると言えよう。"Objects from the Past"はまるで水面下で鳴らされているようなサウンドで、深海でうねる潮流のなかから、プランクトンが音の粒となってゆっくりと浮かび上がってくるかのようだ。"To Alter a Vector"におけるキックは非常に強力で、ゴム製のマレットか何かで巨大な船体を打ち鳴らしているかのようだ。そうしたスケール感の大きなサウンドがエコーとディレイで処理され、より微細な質感を持ったサウンドと対比される瞬間は実に美しい。 アルバム前半はより余白を広く残したサウンドメイクが特徴的で、 さらさらとした隙間の多い密度感はアルバム後半よりも魅力的だ。4曲目の"Spectral Participant"でアルバムはにわかに密度を増しはじめる。サウンドそれぞれが個性を主張するというより、サウンド同士の相互作用が厚みを作り出しているような印象で、"Attack on the Reality"でのオーヴァー・コンプレッションされたサウンドはあらゆる方角に飛散するかのようだ。"Nefertiti / Always Beyond"など、ダイナマイト級のダンスフロアー・カットもそこから続き、多幸感にあふれたタイトルトラックは明確さと美しさが見事に同居している。アルバムはそこからハードな色合いを増していき、生々しいベースと強迫的なサウンドに満ちたクレイジーな展開を見せる。メロディはトラックの奥深くに沈み込み、まるでこの混沌をぎりぎり繋ぎ止める碇のような機能を果たしている。この『Perceiver』において、PVHは大胆な方向転換よりも自らのスタイルをより鋭く磨きあげて進化させることにより、他の追随を許さない圧倒的な作品を作り上げたのだ。