Mark Ernestus Presents Jeri-Jeri With Mbene Diatta Seck - Xale

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  • この「Xale」の鮮烈さをひと言で表現するならば、それはMark Ernestusが持つおそるべきプロダクションの多様性にあるだろう(そして、それは同様のことが彼の前作であるMbeuguel Dafa Nekhプロジェクトにも言える)。これに近いアプローチのレコードを10年前に彼がリリースしていたとしたら(たとえばRhythm & Sound時代に)、アフリカのディアスポラ・ミュージックと無限に広がるリヴァーブの世界の出会いはどんなサウンドの進化を見せていただろうか?もちろんこの場合、リヴァーブがディアスポラ・ミュージックを遺伝子レベルにまで分解する、という意味だが。 でも、それはもはや過ぎた仮定の話だ。ここに届けられた3つのトラックで、Ernestusはその創造性を惜しみなく注ぎ込み、歴史記述家的なプロデュース・スタンスで暖かいアコースティックなトーンや参加ミュージシャン(セネガルのヴォーカリストMbene Diatta Seckやパーカッション・グループJeri-Jeri)がそれぞれ固有に持つ豊かで自然な音場をそのまま再現することにフォーカスしている。さらに、彼らが演奏するダンスミュージックの様式(ムバラとして知られる、アフリカ固有の陶酔性を帯びた繊細で隙間の多いファンク)はごくオーソドックスなかたちで反映されており、そこにテクノとの明確な接点は見つけられない。 それにしても、「明確な接点」とは重要なキーワードだ。それはタイトルトラックや"Xale Rhythm"などにおいて顕著だが、録音された素材はほとんど加工はされておらず、なおかつ狂乱的なポリリズムはその圧倒的なコンビネーションでErnestusの音響彫刻家としての一面をさらけ出している(そしてそれは彼のルーツであるダブ・テクノにおける手法でも同様のものだ)。だからこそ、これほどまでにオーガニックな感覚でありながら強烈なグルーヴを実現できるのだろう。Ernestusと彼のアンサンブルが奏でるサウンドはかならずしもアグレッシブな類のものではないにせよ、この12インチに詰め込まれた濃密さを踏まえればその基盤はWilliam Bennettが手掛ける著名なCut Handsシリーズと多くの部分で共通しているといえるだろう。
RA