Skudge - Haste

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  • Skudgeはその洗練された技巧をもって常に退屈さを排除しつつ、クラシックなテクノの定型を忠実になぞってみせる。その鍵となっているのは、おそらくこのデュオが有する呼応的な作曲技法にあるはずだ。メロディはごくシンプルかつヒプノティックだが、それ単体では決して成立しない。たとえばこのEPに収められた"Wonder Stories"にしても、ベースラインの隙間は広がりのあるコードで埋められ、より小さな隙間は陰鬱な2つのノートのドローンで埋められている。それらのエレメント単体だけで聴いているとごく平凡なものなのに、ひとたび一個のシーケンスとして鳴らされると、まるで充分に潤滑油が行き渡った機械のように完璧かつ複雑な調和をみせはじめるのだ。"Haste"という、なんとも言い得て妙なタイトルが付けられたトラックは、このデュオの手掛ける作品としては異例ともいえるほどシンプルな印象だが、速いスピードでうごめく明瞭なコードはまるで旗が風ではためいているような感覚を覚えさせる。ごくミニマルな展開のトラックで、あとはフィルターが微細に変化したりベースが抜き差しされるぐらいのものだが、このトラック特有のぐいぐいと前に押し出すようなグルーヴには文句のつけようがない。
RA