Go Hiyama - Arc One

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  • 2010年にリリースされた「Survival」以来となるGo HiyamaのToken復帰作、「Arc One」にはある種の忍耐が音に反映されている。たとえば"Farnsworth House"でのリード・シンセはトラック自体のどろどろとしたグルーヴに対して終始浮き上がったままのようにも感じる。それらがじわじわと耳に入ってきても、分厚く身悶えするかのようなトーンは変わらぬままで、延々とループを続ける。他のエレメントはリニアな変化を続け、4/4のホワイトノイズやギラリとしたスタブ、岩のように硬いスネアはじわじわと絡み、それらの眩いパーツが渾然一体となってトラック固有の繊細なヒプノティックさを形成するのだ。 "Dymaxion Map"と"Fallingwater"では、グリッチーでクレイジーなドラムを配しているものの、"Farnsworth House"同様のフィーリングを穏やかに展開している。"Dymaxion Map"は"Farnsworth House"での脈動を硬質なモチーフに置き換え、非対称のシェイプに絡ませたうえで淀んだメロディの上に振りまいている。いっぽう"Fallingwater"はよりシンプルで、単音の音色を中心にビルドアップしていく。不穏なデジタル仕立ての霧笛のようなサウンドがとりわけ特徴的だが、やはりその全体像を掴むにはかなりの忍耐が必要で、じわじわと待たされているとやがてドラムと突き刺さるようなコードが火花を散らしはじめる。この強固なシンプルさこそこのEPの本質を貫いているものであり、じつにヒプノティックで痛快な作品である。
RA