DeepChord - Sommer

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  • 1946年にフランスの芸術家Yves Klein(訳注:イブ・クライン。単色で絵画を制作するモノクロニズムの第一人者)は『空気の建築』なるコンセプトを着想した。その観念は、自然界の物質をそのままアートとして表現することにあった。それから65年を経て、Rod Modell—彼自身もヴィジュアル・アートに深く影響されている—は自身にとっての2枚目となるDeepChordとしてのソロ・アルバムでKleinのコンセプトをそのまま再現しようとしている。まさしく、Rod ModellはYves Kleinの精神をそのまま音楽に変換していると言うことができよう。2010年の『Liumin』そして2011年の『Hash-Bar Loops』といったEchospaceまたはDeepChord名義でのアルバムで、彼は東京やアムステルダムで収録したフィールド・レコーディングの素材をもとに重厚なダブ・サウンドを作り上げてみせていた。 ここで彼が都市の環境音のかわりに波形サンプルを使ったり、ボンゴやウィンド・チャイムを使っているからと言って、このアルバム『Sommer』がCafé Del Marスタイルのチルアウト・ミュージックに成り下がっているという意味ではまったくない。やはり、彼の音楽は地中海で全裸で泳ぐためというより、月面歩行のための音楽なのだ。しかし、"Spring Mist"でのサウンドの変調の推移は『Hash-Bar Loops』でも聴くことのできた不安定さはそのままに、このアルバムでRod Modellはそれまでのヘヴィーにストーンした感覚を一掃し、新たな機軸を見せている。アルバムのオープニングを飾る"Glow"は地平線から太陽が昇るさまをサウンドに置き換えたようでもあり、"Aquatic"のリズムにおいてはRod Modellが敬愛するMaurizioからの影響の強さが窺い知れると同時に、重く淡々としたものというよりは一種の軽やかさを感じさせるまでに成熟している。また、"Aeronautics"や"Wind Farm"でのアトモスフィアの創出ぶり、アンビエント・サウンドの温度感も素晴らしい。 この『Sommer』でRod Modellが提示しているサウンドはもはや「Basic Channelフォロワー」という狭い枠では語れないものになっている。"Aquatic"や"Flow Induced Vibrations"といったトラックではたしかにレゲエを換骨奪胎した裏打ちのリズム、リヴァーブなどが用いられているが、アルバムの大半で彼がトライしようとしているのは定型化したダブ・テクノのリズムのさらに先の次元なのだ。たとえば"Fourier"での南国風味のビートは、Cadenzaからリリースされてもおかしくない類のものだ。このアルバムは、彼がこれまでDeepChordとして手掛けたアルバムのなかでももっとも液体的な仕上がりだ。液体的、という表現はトラック群のつながりだけにあてはまるものではなく、その全体として浮かびあがってくる心象風景にもあてはまる。"Cruising Towards Dawn"ではBiosphereのひんやりとしたエレクトロニカを感じることもできるし、アルバム全体で言えばYppahの近作アルバム『Eighty One』(同じく「海」にインスパイアされた作品だ)にも近い輝きを感じることが出来る。また、"Benetau"や"Wind Farm"での熱帯雨林の湿度を思わせるサウンドはLone『Galaxy Garden』でのビートレス・インタールード的でもある。このアルバムはいわば『音の建築』であり、Kleinがこれをもし聴いたらさぞ誇りに感じることだろう。
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