Dices - Udacha 2

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  • A5による強力なリリースとともにスタートしたロシアのレーベル、Udachaからの次なる刺客はDices。A5同様謎に包まれたアーティストによる2枚目のリリースだ。A5の「Udacha 1」ほどごちゃごちゃとした内容ではなく、今回は均整の取れた内容だ。Dicesのリード・メロディはときにバックグラウンドのアンビエンスのようにも聴こえる(もちろん良い意味でだ)。"Confuse"ではただれたようなピアノとダブル・ベースの音色が遠くのほうで生き生きと鳴り響き、ダブワイズなコードは甲高いヴォーカルとともにくっきりと浮かび上がっている。何度聴いてみても、にわかに全体像を掴ませないようなところがある。包み込むようなアトモスフィアと力強いリズムはこのうえなくキャッチーなのに、だ。どこかBruno Pronsatoの作風を彷彿とさせる部分がある。 それぞれ個性は異なるとは言え、こうした特徴はほかの3つのトラックでも同様だ。そこから浮かび上がってくるのは、Dices自身のディテールに対する耳の良さだ。たとえば"Wooden Alien"での繊細なディレイの使い方は素晴らしく、一個のクラップにかけられたエフェクトはイレギュラーにオーヴァーラップしながら整然としたパターンを保持している。そのまわりには穏やかな森のようなアンビエンスが渦を巻き、やがて鳥の鳴き声やウッディなドラムとともに美しいオルガンが鳴り響く。だが、ディテールを軸に話をするならば、"Evening Clouds"こそがこのEP中でも最も際立ったトラックだと言うべきだろう。この曲でのドラムプログラミングはとにかく素晴らしい。爪弾くようなギターや駆け上るようなシンセが仮にこの曲に無かったとしても、そのリズムだけでも充分にリスニングに堪え得るはずだ。B1に収録された"Travel Bug"はストレートなアプローチだが、他の3トラックと同様、ゆったりとしたオルガンや柔らかなベースが醸し出すオーガニックな感覚はそのアナログ的なノイズなども含めて格別だ。この「Udacha 2」は傑出した作品だと言うことが出来る。
RA