Oneman - Fabriclive 64

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  • 私自身はどうしてもOnemanをBen UFOやJackmasterと並べて語りがちだ。彼らは3人とも純然たるDJだし、単独の作品リリースもしていないところも同じだ。ロンドンのパイレート・ラジオRinse FMのレギュラーDJであるというところも共通しているし、彼ら3人がUKのアンダーグラウンド・ダンスミュージックの最前線にいることはまちがいない。彼らのDJセットには、いつだってホットなダブプレートや最新トラックが満載だ。OnemanとJackmasterの共通点というところでもうひとつ、彼らのパーティDJ的なスタイルも特徴的だ。クラシック・チューンやメインストリーム・チューンを織り交ぜつつ、ときにはヒップホップさえもそのセットに混ぜてくる。Jackmasterは以前リリースされた彼のFabricliveにおいてそのスタイルを存分に披露してくれたが、こんどはOnemanの番だ。しかし、驚くべきことにOnemanによる今回の『Fabriclive 64』ではヒップホップも織り交ぜられていないし、エクスクルーシブのダブ・プレートさえ入っていないのだ。 ヒップホップに関しては単にライセンスの問題だろう。メインストリームのラップ・トラックをミックスに収録しようとすると、Hessle Audioのトラックをライセンスするよりもはるかに高額な著作権料が必要となる。ダブ・プレートが収録されていない点についての理由はもうちょっと複雑で、それはOnemanがこのミックスを「2010年の再現」というコンセプトのもと制作しているということに関連している。トラックリストを見てみれば一目瞭然だろう。昨今のミックスCDは「新曲+エクスクルーシブ・トラック」ばかりで構成されるのがほぼ通例のようになっているが、我々はあまりにもその通例に慣れ親しみすぎているということなのだろう。思えば、彼がRinseのミックスCDシリーズをリリースした時も、そうした「新曲+エクスクルーシブ・トラック」的な内容とは一線を画すものだった。偶然の産物かもしれないが、この『Fabriclive 64』は「2010年の再現」というコンセプトに反して非常な新鮮さに満ちている。Pearson Sound "Untitled"の冒頭3分間における、空間に溶け出していくかのようなグルーヴの埋め方や、問答無用の2012年のアンセム"Ellipsis"を中心とした中盤での戦慄さえ催すようなクライマックス構成などはこのディスクでももっとも魅惑的な瞬間を用意している。 まさにそうした瞬間の積み重ねこそがこの『Fabriclive 64』においてひとつの調和を生み出している。Onemanは決して派手なタイプのDJではないが、そのユニークなスタイルは折り紙付きだ。たとえロングミックスであろうと否応無く際立つその独特のスタイルは、1998年から2010年までのUKアンダーグラウンドの歩みが滲み出てくるようだ。何故1998年を引き合いに出すかというと、このミックスには我々が当初期待していたヒップホップが入っていない代わりに、1998年ごろのヴィンテージなガラージのヴァイブがあるからだ。モダンとレトロの絶妙なせめぎ合いはこのミックスの重要な部分ではあるが、とりわけ終盤でのJoy OrbisonやBoddikaのトラックとTuff JamやSteve Gurleyのトラックがミックスされていく展開は圧巻だ。ミックス終盤でのこうしたヴィンテージ・ガラージ的な味付けは、その隙間によりアブストラクトな要素を挟み込むことで一際印象的なものとなっている。 後付けのようになって申し訳ないが、この『Fabriclive 64』にはひとつも新曲が収録されていないわけではない。Boddikaの"Soul What"は非常に印象的な存在感を示しているし、Teethによる"Shawty"も同様だ。また、Thefftのような期待のニューカマーのトラックも収録されている。もし過去数年のUKアンダーグラウンドに注意を払ってきたリスナーならわかるはずだが、この『Fabriclive 64』で展開されているミックスはまるでUKアンダーグラウンドの辺境を巡る小旅行のようだ。見晴らしのよい楽しい風景が広がっていると思うと、とたんにその風景はアブストラクトに変化したりもする。非常に手の込んだ手法が随所に盛り込まれることによって、じつにスムーズで楽しい小旅行が用意されている。