Submerse - Tears EP

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  • Submerseによる新作「Tears」は7曲ものトラックが収録され、すでにシングルと言うよりはミニアルバム的な体裁に近いのだが、このジャンル横断型プロデューサーらしくその内容もことごとくヴァラエティに満ちている。現在東京に拠点を置くRob OrmeことSubmerseはWhistlaのL2S Recordingsからリリースした初期作品群によってフューチャー・ガラージ的なカテゴリーに置かれていたが、それ以降の彼のプロダクションはベースライン、2ステップ、ドラムンベースといったUKのあらゆるダンスミュージックのスタイルを行き来しながら成長を続けている。 もしこの「Tears」の前作にあたる「They Always Come Back」を耳にしたことがあるなら、このEPにおけるアンビエント仕立てのAutonomicといった趣のタイトルトラックや全体的に横溢しているヒップホップ由来の感覚はそれほど驚きではないだろう。もっともSubmerseらしさが表れたトラックは唯一"It's Over, I Lost"ぐらいなものなのだが、その自虐的なタイトルはさておき、トラック自体は非常に多幸感に溢れ、彼らしい悲痛なバラード性を最も優美に表現している。"Kerosene"ではOrme独特のあっさりとした女性ヴォーカルと明るめで軋んだチャイムが楽しめるし、"Pressure"ではガラージとヒップホップをストレートで賑やかなハウスのなかにうまくまとめている。その他、"Cream Soda"、"Meaningless Moments In Capsules"、"Stars"では整然としたディープなビバップ調でまとめあげられ、そこにはけばけばしいベースラインは存在しない。 これが彼の従来のスタイルからの飛躍なのか、それとも普段の120-140BPMから一時的に距離を置いただけなのかはわからないが、これまでガラージに馴染みが無くSubmerseを知らなかったというリスナーにとっては、この1枚がSubmerseという驚くべき才能を持ったアーティストを知るための絶好の入り口となることは間違いないだろう。
RA