Justin Martin - Ghettos & Gardens

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  • 2003年に手掛けた"The Sad Piano"でエレクトロニック・ミュージックの世界に足を踏み入れて以来、Justin Martinはひたすらにベース・ヘヴィーかつ美しいメロディを伴った作品群を手掛けてきた。このサンフランシスコ在住のプロデューサーにとって、そうしたスタイルはもはや名刺がわりのようなものにさえなっているが、Claude VonStrokeと共に共同運営するDirtybirdから遂に彼のファースト・アルバム『Ghettos & Gardens』が届けられるに到った。 おおよそ予想のつくことではあるにせよ、このアルバムには彼のエクストリームなサウンドが目一杯詰め込まれている。"Hood Rich"、"Ruff Stuff"といったトラックやアルバムのタイトルトラックはまさにMartinらしいプロダクションが如実に表れているが、それは巨大なフェスティバルと小規模なフロアの両方で見事に機能するものだ。とはいえ、このアルバムではただハードなだけではないこれまで知られなかった彼の繊細な一面もしっかりと窺わせている。"Take Don't Go"を例にとれば分かりやすいはずだが、このトラックではスムーズな2ステップ調のトラックにピッチを早めた女声ヴォーカルを絡めている。ベースラインは決して主張しすぎることなく、よりコード進行にフォーカスされ、それは"Butterflies"でのストリングスやアルバム終盤のダウンテンポ"Ladybug"でも顕著に表れている。 同郷サンフランシスコのプロデューサー、Pillow Talkとのコラボレーションはこのアルバムでも屈指のハイライトを演出している。その"The Gurner"は疑いようのないラブソングである。数多くのリミックス・ワークでも知られる通り、ここでもMartinはGoldieのクラシック"Kemistry"を引用している。ただ従来とは異なる点は、ベース・ヘヴィーでありながらオリジナルの深みとエモーショナルさをあえて抜き取っているところだ。このアルバムにおいて、Martinは再び彼のスムーズでハイクオリティなプロダクション能力を証明しつつ、彼の持ち味であるユニークなパーソナリティもしっかりと反映されている。実にバランスのとれたアルバムであると同時に、控えめな個性と強烈な個性が絶妙にせめぎあっている内容だとも言えるだろう。
RA