Dez Andres - Things U Like

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  • 故J Dillaの遺した精神はいまも多くの人々に受け継がれているが、DJ DezことDez AndrésまたはAndrésほどそのスピリットを強く忠実に引き継いでいる者はいないだろう。ラフなハウスとヒップホップの隙間を行き来し続けるこのデトロイト出身プロデューサーによるM1 Sessionsからの最新作は、またしても故J Dillaとの深い繋がりが滲み出たものになっている。そのサウンドは、もし今もJ Dillaが生きていたらこんな作品を創っていただろうと思わせる、まさにそのものだ。"New for U"ほどの際立ったトラックはないものの、それでもやはりここにはどうしようもなく生々しく、クランチーなグルーヴが溢れている。 1曲目のタイトルトラックでは楽しくも勇壮なビーツがキックやクラップとともに小気味よく浮いたり沈んだりを繰り返す。次の"Merry Go Round"はより複雑だ。シンプルなループがせめぎあう中、叩き付けるようなヒット音によってぐっと重心が下がり、熱でただれたような2つの音で構成されるメロディが雨粒のように降り注ぐ。"Sessions So Long"は今作中もっともハウス的と呼べそうなトラックで、勢いのあるビーツに粗いスナップが被せられている。すべてのサウンドが粗く潰されたような質感で、ヴェールを帯びたようなヴォーカル・フックやシロフォン的な甘い音色もその沈んだ色彩を持ったグルーヴを引き立てる。これまた甘い音色に彩られた"Dubb Zone"はレイジーでぼやけたトラックで、よろよろと前後に揺らぎ続ける。このEPはまるでDezが一日中部屋の中にこもって古い機材を弄りまわしているのを眺めているような生々しい感覚を覚えさせ、中毒性の高いビーツが最初から最後までぎっしりと詰め込まれている。
RA