Simian Mobile Disco - Unpatterns

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  • 酷評されたセカンドアルバム、『Temporary Pleasures』以来3年振りとなるSimian Mobile Discoの新作アルバム。前作ではスター級のゲスト陣に頼り過ぎ、しかもそれらがちぐはくな内容になっていたことでJames FordとJas Shawの2人はひどく揶揄された。率直に言えば、前作アルバムに参加していたゲストはどれも退屈で印象に残らないものばかりだった。James FordはArctic Monkeysといったインディ・バンドのプロデュースで成功を収めていただけに、なおさらこの事実は皮肉なものに映ったものだ。さらに、前身バンドSimianのメンバーとしてFordとShawの2人はJusticeのジャンル横断型リミックス"We Are Your Friends"で勢いに乗り、Primal ScreamやHappy Mondays以来最良のインディ/ダンス・クロスオーヴァーと評されて名を上げていただけに、前作アルバムでの失敗のダメージは大きかったろう。 彼らの逆襲は2010年にリリースされたEP、「Delicacies」から始まった。彼ら自身のレーベル、Delicatessenからリリースされたダークでひねりの効いたテクノは口うるさい批評家連中を黙らせるには十分だった。さらなる逆襲はこのアルバム『Unpatterns』でも続き、彼らは完全に評価を取り戻したようだ。この作品には実に巧妙なプロダクションが編み込まれており、クラシックなエレクトロニック・ミュージックの定型を引用しながらも実に当代的なサウンドに仕上がっている。まずは"Your Love Ain't Fair"を例にとってみよう。カットアップされたディスコ・ヴォーカルで幕を開けるこの曲で、SMDは伝統的なシカゴハウス的なシンセを畳み掛け、Julio Bashmoreを思わせるような脈動するベースラインに埋め込んでいる。"Put Your Hands Together"ではフレンチ・ハウス的なループ・スタイルを拝借し、その一方で"Seraphim"ではPhotekの"Mine to Give"を彷彿とさせる端正なテクノ・ソウルを披露してもいる。スローなアシッド・ブレイクダウンを有したこの曲では、かつてのBeatlesのミューズにしてイギリスのお茶の間名司会者Cilla Blackのヴォーカル・サンプルがこの上ない美しさと精巧なエモーションを醸し出している。その豊富なサンプリング・ソースの引き出しもさることながら、そうしたなんでもないサンプルからソウルを抽出してみせるその手腕にはまったくもって恐れ入る。 このアルバムは、レーザー光線飛び交うフロアのためのトラックばかりではない。サブリミナル的な意識が介在しているかどうかはわからないが、"Cerulean"ではOrbitalのブリーピーでロボティックなテクノ・スタイルが巧妙に模倣されている。"The Dream of the Fisherman's Wife"は8ビット仕掛けのぎくしゃくとしたリズムの上に電子音の搾り滓が流星群のように降り注いでいく。対照的に、アルバム中でも最もコンテンポラリーなサウンドに仕立て上げられた"Interference"ではエコーにまみれたScuba的なベースとデトロイト・テクノ的なスカスカのリズムが組み合わされ、午前2時のBerghainでプレイされたとしても何の違和感もないトラックと言えるだろう。このアルバム『Unpatterns』はSimian Mobile Discoにとって今後の分水領となるべき作品だ。たしかに彼らにはその出自からインディ・シーンとの繋がりも深いが、それでも彼らはインディ的なサウンドと決別し、自らの目指すダンスフロアーのためのサウンドを選びとった。このアルバムは、彼らが正しい選択をしたという事実を自ずから証明していると言えるだろう。
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