Various Artists - Earth Tones 3

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  • 2010年にFred PのSoul People MusicがオムニバスのEPシリーズ「Earth Tones」の1枚目をリリースした際、RAのTodd L. Burnsは無名アーティストが中心にもかかわらずその内容が強力であるという点を称賛していた。3枚目となる本作でも、その方向性は揺るぎなく継続されているようだ。レーベル・ボスであるFred Pも参加しているが、ここで彼が披露した"Hypnothesis"は普段の彼の作風以上に気難しく抑制された印象で、キックは深く埋められ、輪郭のぼやけたヴォーカルや耳障りなほど明るいシンセ・サンプルがぎりぎりのところでトラックのグルーヴをつなぎ止めている。ダンスフロアーを混乱に陥れるにはこれほどぴったりなトラックもないだろう。 今回のハイライトはLeonid Nevermindだろう。彼のトラック"Use the Moon"は生き生きとしたストリングスが爽やかに滑り、ゴリゴリとしたブギー・ベースラインがしっかりと重心をキープしている。このトラックは、Soul Peopleのレーベル・イメージとして定着しつつあった密室的なディープハウス的作風に今一度大きく風穴をあけるものだ。こちらもほぼ無名に近いアーティスト、Naoki Shinoharaによる"Statics"は非常に祝祭的な色彩が強いトラックで、次々と表情を変化させるビートはこちらもこれまでのSoul Peopleのレーベル・カラーを打ち破るようなラージで不揃いな感覚に満ちている。その背後に埋め込まれたハイハットによってグルーヴがつなぎ止められており、まるで時計仕掛けでパッチワークを縫い上げているようにも感じられる。そして、Levon Vincentがいち押しの逸材、Joey Andersonによる"Track 3"はまるでスポンジのような可塑性を持ったダブ・テクノだ。抑制されたビートにじりじりと蠢くようなグルーヴが絡み付き、まるで典型的な4/4ビートを打ち込むことにためらっているような感覚をおぼえる。このThe Earth Tonesシリーズ3作目には、Fred PのすぐれたA&R感覚が滲み出ているとも言えるだろう。
RA