Jimmy Edgar - Majenta

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  • 流浪のエロス偏執者Jimmy Edgarは新たなリリースの場をHotflushに定めたが、依然として彼独特の紫のけむりに咽ぶロボット・デカダン的世界観は健在だ。この『Majenta』はこれまでの彼の作品でも聴くことが出来たスカスカなシンセ・ファンクの作風を継続したものでありながら、以前までの冗長さが消え去り、よりクリエイティブかつ情熱的な印象に仕上がっている。表面上ではこのアルバムに目新しいインベンションはない。しかし、前作の『XXX』よりも作品全体がさらにタイトに整えられているのは明らかで、かなりの意欲作に仕上がっている。 彼の初期作品を彷彿とさせる冒頭3曲のたたみかけでこのアルバムは始まるが、その痛烈さとうねりの大きさは以前にも増して強力だ。"Too Shy"では幾層ものレイヤーが重なったり散らばったりを繰り返しながらそれらが混沌とした調和を成している。そしてつるつるとした液体的なベースラインは一定の周期でするすると出入りを繰り返している。Edgarお得意のメカニカル仕立てのファンクが彼の作品を通底するセクシャルなテーマ性と相反していると見る向きもあるようだが、"Sex Drive"を聴けばそんな意見は吹き飛ぶだろう。ドラムマシンがエクスタシーさながらの絶頂に登り詰める傍らでは、"pull out my dick and let you lick."という猥雑きわまりないリリックが添えられているのだ。いっぽう、このアルバムでは彼自身がエロスの伝導師と化している場面も多く、"This One's for the Children"などという挑戦的なタイトル(もちろんその内容は断じて子供向きなどではない)のトラックがあったり、"I Need Your Control"ではそのタイトルや硬質なドラムが明白なSM的テーマを醸し出してもいる。 Edgar独特の無愛想なスタイルやその滑らかなヴォコーダー(このアルバムでも"Touch Yr Bodytime"やアルペジオまみれの"Heartkey"でしっかりとフィーチャーされている)への彼の偏愛は我々も知っているつもりだったが、このアルバムの中盤2曲では彼の新たな一面も垣間みることが出来る。それは現代のベースミュージックに対する、なんとも魅惑的な接近だ。"Indigo Mechanix (3D)"と"Let Yrself Be"の2曲ではEdgar自身のヴォーカルを切り刻んだものがフィーチャーされていて、小刻みかつ神経質に突き刺すようなそのサウンドはSepalcureをEdgar流のエロスのダンジョンに監禁したようにも感じられる。この2曲はまさしく彼のサウンドにおける新たな一面であり、そこから続く"Attempt to Make It Last""Hrt Real Good"といった短いインタールードでもマッシヴなゲート・ドラムの使い方が新鮮な印象を残している。その空間性の活かし方によって彼のサウンドはよりビッグで強力なものになっている。とはいえ、これらのインタールードはじれったいほどに短く、そのためまだ未成熟な印象があるもの確かだが。 しかし全体的に言えばやはりこのアルバムに横溢しているのは、Edgar独特のきわめて男臭くも心地よいサウンドだ。実は最初にこのアルバムを聴いたときの私の印象はそれほどのものではなかったのだけれど、彼がかつて"I Wanna Be Your STD"で歌っていたような淫靡さと同じ感覚がこのアルバムでもじわじわとした中毒性をもって侵食してくる。前作『XXX』で彼は"My rhythm is a physical motion(俺のリズムは肉体的なモーションそのものだ)"と歌っていたが、その妖しげなリリックの意味はこの『Majenta』を聴いた後ではよりはっきりしたものとして認識できるはずだ。Edgar独特の性に対する偏執的なまでのこだわりはついにそのビートと同化するまでに昇華しているのだ。性に対する偏執という意味ではまだまだ彼はPrinceには敵わないが、Princeとは違うアングルからJimmy Edgarらしい切り口でセクシャルさを表現する方法を彼は見つけたのだろう。