Lakker - Arc EP

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  • アイルランドのデュオ、Lakkerによる新作EPはすぐに注目を集めるタイプのシングルではないかもしれない。くすんだコードと歪んだサウンドはいかにも当代的なダーク・テクノといった第一印象だ。しかし、彼らのサウンドにはそこからはみだしていくような要素が実は含まれている。ひとつはその作風の幅広さだ。120から138のBPMのあいだで展開される4トラックにはじりじりとしたピークタイム・テクノから抑制された重厚なハウス・トラック、テクノとガラージを熾烈にぶつかり合わせたハイブリッド・トラックまで、実に幅広いタイプのトラックが並んでいる。もうひとつは、そのサウンドの精巧さだ。その揺るぎのないプロダクションは、遠くでなるようなベル、軽やかなシェイカー、花びらが吹くようなメロディといった豊かなディテールを次々に描き出していき、モノトーンな色調のトラックにかすかな色彩をふりまく。 4トラックを通じて、彼らはほんとうに多彩なサウンドを展開しており、沈鬱な"Arc"はここ最近のModern Loveでのリリースにおけるリード・フレーズ主体のサウンドに対する返答のようにも聴こえるし、"BKRO"での猛然としたグルーヴはあきらかにBerghainのフロアーをターゲットにしている。また"ED"や"Evening Lemon"はShedやJuk Juk、Peverelistをはじめとした性急なブロークン・リズムの作り手たちを意識しつつもサブリミナル的にミックスされたフィールド・レコーディングと幻惑的なメロディがスナップの効いたクレイジーなリズムに新たな彩りを添えている。とりわけFunctionの"Inter"が好きなリスナーには、"Evening Lemon"におけるビタースイートなエモーショナルさは心を鷲掴みにされるはずだ。
RA