The Citizen's Band - Broken Rome

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  • Roman FlügelやMassimiliano Pagliaraをはじめとした多彩なタレントを擁するフランクフルトのLive At Robert Johnsonは、めったに間違いを犯さない。Arto Mwambeの片割れでもあるChristian Beisswengerの手によるこの1枚も、その例に漏れずといったところだ。骨太でしっかりと構成された3トラックは、マイルドながらも確実にみぞおちを抉ってくる。タイトルトラックを彩る不協和音のオルガンは掃射砲のようなスネアとやがて襲ってくるガラスが割れるような衝撃音の合間にゆらゆらと漂う。お行儀の良いハウスに満足できないリスナーにとって、奇妙な質感のシンセに彩られたこのノイジーで不安定なグルーヴはまさしく歓迎すべきものだろう。様々なジャンク・パーツが突如として生命感を持ったような、そんな印象も受ける。 "Densed"はよりストレートなトラックで、8分間をかけてじっくりとセクシーにテンションと感情をビルドアップしていく。その肝と言うべきは驚くほどの分厚さを持ったローエンドで、雪だるま式になって転がり続けてパーカッションの破片やシンセの断片を呑み込んでいく。とりわけフックと呼べるべきものはないが、それでもこのよろめくような不断のグルーヴはまちがいなくダンスフロアーの熱量をキープするために役立つはずだ。中盤を支配するサステインの効いた、煌めくようなパッドも決してこれ見よがしな印象はない。"Into"はより密度の高い印象で、気怠いIDM調のブレイクビーツの中にのんきなシンセと鳥の鳴き声が満たされている。他の2トラックのソリッドさに比べると埃っぽくも柔らかなこの曲のタッチはビーツの隙間に吹き込まれた新鮮な空気のようでもある。昨年The Citizen's Band名義でリリースされたデビュー作に比べるとこの「Broken Rome」は随分異なるサウンドではあるものの、彼からは今後さらに多彩なサウンドが期待できそうだ。
RA