Martyn - Hello Darkness

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  • 「Martynの新作"Hello Darkness"は最初のうちは最高のトラックに聴こえるが、シンセが入ってくるとFruity Loopsのデモのような陳腐なものに成り下がってしまう」とRAのAndrew Ryceが少し前にツィートしていたが、正直私自身は「すこしばかり大げさな言い草だな」と思っていた。そのツィートを目にした次の日、私自身もそのトラックを聴いてみた。うん、スタートはなかなか期待を持たせる感じだ。薄暗い色調のミッドレンジがソリッドなガラージ調パッドの上で抜き差しを繰り返している。だが、そこで件の安っぽいプリセット然としたチャーチオルガンの登場だ。作った本人はレイヴ時代へのオマージュかなにかのつもりなのだろうが、そこにはスマートなコード進行やスリリングなクライマックスといった類いのものはまったく欠けている。そのシークエンスはただゆっくりと暗闇の中に沈んでいき、しばらく経ってからふたたび浮かび上がってくるだけだ。 2つのヴァージョンで収録されたリミックスはそれに比べると随分ましだ。ビートレスでありながらも濃密なL-Vis 1990 & Bok Bokによる"Bauplan"はなかなかトリッキーなリミックス。それはまさにサンプルの洪水と言うべきで、荒々しい息づかいから銃声、巨大で邪悪なスウィープまで多様なサンプルが組み合わされている。オリジナルのケレン味のないアルペジオは聴こえるか聴こえないかぐらいのぎりぎりのところで活かされており、最終盤になってようやくその全体の輪郭が現れる。Redshapeが手掛けた"We Are You in the Future"はまさにCarl Craigを彷彿とさせる仕上がり。その展開はランダムさを含みながらもじわじわと進行し、巧みに予定調和を回避している。オリジナルの過剰さが程よく抑えられ、ゆったりとしたトリップ感が味わえる。その抑制されたムードとバランスさせているというわけではないだろうが、"It may be an accidental side effect of the drug.(ドラッグによる予想外の副作用)"という悪どいsci-fi調のサンプルも効いている。