Atom TM & Tobias. - Grand Blue

  • Share
  • Atom™とTobias.の2人がコラボレーションを行うのはこれが初めてというわけではない。そもそもTobias.とAtomが知り合ったのはTobias.がFairlight CMI(黎明期の8ビット・サンプラー。現在はiPhoneアプリでもそのシミュレート版が楽しめる)のセールスマン兼エンジニアを務めていた時代とのことで、かなり付き合いは長い間柄ではある。Logistic RecordsやPomeloからはAtom™ & Pink Elln (かつてのTobias.の別名義)としてオールドスクールなアシッドハウスを軸にしたライブ・レコーディングを連作でリリースしてもいるし、さらにこの2人にRicardo Villalobosを加えたOdd Machine名義ではNon Standard Instituteから12インチを発表してもいる。 今回Mule MusiqよりリリースされたAtom™ & Tobias.名義でのアルバム『Grand Blue』は前述のアシッドハウス作品群とはまったく趣を異にする、静謐なピアノ・アンビエント作品だ。昨2011年に新潟の苗場グリーンランドで行われたThe Labyrinthへの出演のために宿泊していたホテル(その名も「Grand Blue」)のロビーに置かれていた2台のピアノをその場で演奏し、フラッシュ・レコーダーにそのままライブ録音したというこのアルバムには、ホテルのロビーを行き交う滞在客の足音やざわざわとした会話までもがそのままのかたちでピアノの音色とともに記録されている(4曲目に収められた"Durchlauf"のみが日本語ヴォーカルが入った奇怪な70年代サイケ・ロック調の楽曲で、一際謎めいた異彩を放っている。この曲だけは別の環境で録音されたものなのかもしれない)。 そのピアノ演奏はかなり即興的な色彩が強く、ぽろぽろと空間をこぼれ落ちていくような印象を受けるが、やはり実際にもまったく事前の打ち合わせも無く、完全にその場のテンションとムードに導かれるままに録音されたものであるらしい。Atom™ & Pink Elln名義での2人のライブセットもまた、まったくの即興でシークエンスやパターン、アレンジを積み重ねていくものであることは有名だが、その事実を踏まえて考えると、この2人の長期にわたる持続的なコラボレーションに潜んでいる重要なキーワードのひとつとして即興性というタームが浮かび上がってくるはずだ。緊張感と弛緩のバランスが混在した、非常に密度の高いアンビエント・アルバム。
  • Tracklist
      01. Studie 02. Zusammenspiel 03. Alleingang 04. Durchlauf 05. Kadenz 06. Sehr Langsam 07. Flott 08. Unruhig 09. Ausklang