In Motion #1

  • Share
  • サウンドが内包する映像性、また映像が想起させるサウンドというタームは人間が持つ感覚/感性のイマジナティブな領域にダイレクトに作用するものであるだけに、現代のヴィジュアル・アートの分野ではひとつの大きな軸として存在している。「僕が作りたいのはポピュラー・カルチャーに根ざした音楽で、そのためには映像との結びつきや映画音楽の影響が重要なんだ。ヴィジュアル・アートを勉強していた僕にとっては、映像と音楽が結びついていくのは自然な流れだった」と語るJason Swinscoeがリーダーとして率いるThe Cinematic Orchestraは、まさしくそうしたサウンドと映像が同位に結びついた複合芸術とでも言うべき活動を展開しているプロジェクトだ。 そうした彼らのアプローチがひとつの決定的なかたちとして結実したのが2009年にリリースされた『Man with a Movie Camera』であったことは間違いない。ロシアの無声アヴァンギャルド映画に独自のサウンドトラックをつけるというコンセプトのもと生まれたこの傑作は、サウンドと映像が相互に作用しつづけることである種ポップな強度さえも生み出すというエポックメイキングな作品であった。 Swinscoeがリーダーを務めつつ、作品ごとにメンバーが常に流動的に入れ替わってきたThe Cinematic Orchestraだが、現在彼らはIn Motionというプロジェクト名のもと、自由で流動的なコラボレーションおよびライブセッションを繰り返しつつ映像とサウンドの実験をさらに高い次元へと押し進めようとしている。この『The Cinematic Orchestra presents In Motion #1』はそのライブ・マテリアルを基盤として新たにスタジオ・トリートメントを施した作品集。 この作品にはThe Cinematic Orchestra本体による楽曲をはじめ、In Motionに参加するミュージシャンらによるソロ作品も収められており、ジャズ・ピアニストAustin Peralta、注目の新世代ビート・メイカーの旗手Dorian Concept(The Cinematic Orchestraのサックス奏者Tom Chantとのコラボ)、The Cinematic OrchestraのギタリストGrey ReverendのソロなどがCinematic本体の楽曲と混在するかたちで並んでいる。 本作はCDのみでのリリースとなるため、この作品のベースとなったという映像作品(1921年制作の無声ショート・ムービー『Manhatta』および1924年制作のRené Clair監督作品『Entr'acte』)とのサウンド/映像の相互作用がどのように展開されるのかという点についてはまだ明かされていない。まもなく行われるSonarSound Tokyoで披露される予定となっている彼らのライブセットではいよいよその全体像が明らかになるはずなので、こちらを楽しみに待つこととしよう。
  • Tracklist
      01. The Cinematic Orchestra - Necrology 02. Austin Peralta - Lapis 03. Dorian Concept & Tom Chant - Outer Space 04. Dorian Concept & Tom Chant - Dream Work 05. The Cinematic Orchestra - Entr'acte 06. Grey Reverend - Regen 07. The Cinematic Orchestra - Manhatta
RA