Darko Esser - The Slightly Disturbed EP

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  • 同じトラックのヴァリエーションを3曲収録したEPでありながら、それら3つのトラックはことごとく異なる個性を放っている。Darko EsserによるオリジナルはARPシンセがうねりながら展開し、明るくも捩じれたトラック。まるで高速で回転するメリーゴーラウンドのように浮き沈みを繰り返しながら、浮遊感のあるエフェクトとともにグルーヴをキープしていく。 Sandwell Districtによるリミックスもそれに劣らず魅力的だ。トラックは一聴しただけだと調子の悪い機械のような感覚に包まれ、その表情は沈鬱で硬直したものに思えるが、集中して耳を傾けてみると微細なキックの変化が浮き彫りになって聴こえるようになり、その背後に隠れた幽玄な鋭敏さが姿を表し始めるはずだ。それはまさに具体的で可聴化されたものというよりは、暗に含められたセンセーションというべきで、そこにはハードなリズムや多幸感溢れるコードこそなくとも、実に強烈きわまりないトラックだと言える。とはいえ、このトラックにもひとつだけ欠点を指摘しなければならない。トラック終盤、残り40秒ほどになったところに、痛烈でけたたましいシンセがいきなり挿入されるのだが、そのインパクトはたしかにそれまでトラック内で積み上げてきた繊細な精神性を引き立てている。このシンセによって全体のグルーヴは完全に変化し、はるか高く昇り詰めていく。しかしながら、このシンセは同時にそれまで積み上げてきたトラック固有のムードを空高くに消失させてしまい、映画が終わると同時に、余韻を楽しむ暇もなく映画館から外に放り出されるような感覚を与えるのだ。 いっぽう、Van Hoesenが手掛けたリミックスはそこまで破壊的ではなく、オリジナルでの活き活きとしたARPシンセを大々的に導入して仕上げてみせている。もっと正確に言えば、そのタイトルが示すとおり「引き延ばして、ピッチを変化させた」ものであると言えよう。Sandwell Districtによるリミックスが埃っぽく生命感のない仕上がりになっていたのに対し、Van Hoesenによるこのヴァージョンは暖かかつ液体的であり、丸く柔らかいコードと穏やかに跳ねるようなハイハットに彩られている。連打される808のクラップとスネアのように鋭さを含んだ要素もあるものの、ディレイや繊細なアンビエンスに包み込むことで破綻なくまとめあげているのだ。