Joy Orbison & Boddika - Froth / Mercy

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  • こうして名前だけを並べてみると、やや意外なコラボレーションに思われるかもしれない。方や神経質なエレクトロの作り手であり、方やごくコンサバティブなハウスをここ最近手掛けている。この恐るべき組み合わせ、Joy O & Boddikaはすでにひとつのアンセムと言うべきアシッド・トラック"Swims"を残している。コラボはこの1曲のみに留まらず、アナログに拘るこの2人は定期的なコラボを繰り返し、遂にはそのトラックを発表する場として彼ら自身のレーベルさえ立ち上げてしまった。 先述の"Swims"を別にすれば、この2人のコラボによって生み出されたトラックで最もよくプレイされたもののひとつとして"Mercy"が挙げられるだろう。しかし、これほど人気を博したトラックではあるもののその難解さと意欲的な構造は際立っており、野暮ったいキックと破壊的なオフビート・スネアではじまるこのトラックは歪んだスピーチやクセのあるエフェクトによって彩られる。2分も過ぎる頃にはぶっきらぼうなコードが広がり、コラージュとリピートを繰り返しながら究極まで恐怖心を煽る。実にすばらしくも厄介なトラックだと言っていいだろう。逆サイドに収められた"Froth"は自由律的なムードに振られている。不揃いでどこか滑り落ちるようなコード使いはBoddikaの狂気じみた硬質さとJoy Oの軽やかなシカゴ趣味がちょうど出会うポイントと言ってもよさそうだ。痛烈なスネアで高まる圧力は、にわかに明瞭さを持ったヴォーカルが入ってくるところでようやく解放される。ビルドアップしてはそれらを解放し続けるこのトラックは、敢えて言うなら予測不可能なパーツで作り上げた分かりやすく予測可能なトラックとも言うことができ、結果としてこのトラックは実に個性の際立ったフロア・バンガーであると同時に彼らの特異性を享受した賜物だと言えよう。
RA