• Share
  • Objektの作品はテクノとガラージを自由に行き来し、セクシーなリズムに極悪なパワーを秘めたものとでも表現でき、決して穏やかな作品ではない。"CLK Recovery”のような恍惚感を誘うようなトラックでさえも、そこには脅迫的な感覚と、不気味な何かを召還するような雰囲気が含まれている。さて、今回の”Cactus”は、その彼の作品の中で最も狂暴な作品といえよう。骨を砕くような強烈なドラムと腐食するようなFMベース音がうなっており、まるで荒れ果てた土地に白骨化したガラージのリズムが、不気味でネバネバした低音と共に存在するかのようなイメージだ。”Cactus”は自分の進む方向にある全てを、共食いも辞さずに飲み込んでいく、まるでリトル・ショップ・オブ・ホラーズの植物のようなどん欲なトラックだ。 “Porcupine”は、エレクトロ的なリズムで打ち震える硬質なドラムで破壊されたトラックというところで、例えるならBerghain用に組み直されたAphex Twinと言えよう。今作はObjektにとってまだ3枚目のリリースだが、ドラムの音色とパワーから、シンセサイザーの煌びやかな感じまで、サウンドデザインは既に抜きん出たクオリティを誇っており、"Porcupine”のシンセも常に動き、変化と点滅を繰り返している。しかし、驚愕すべきはメロディックなベースラインが入ってくるパートだ。このパートは曲中に1回しか使用されておらず、それによって曲全体にパワーを与える効果を生んでいる。Objektの「同じことは繰り返さない」という強い意志は、たった1曲の中にすら反映されていると言えよう。
RA