Graphics - Mama Grizzlies

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  • 急成長中のプロデューサー、リーズ出身のGraphicsはここ最近のダンスミュージックにおける最も先鋭的な変化である不安定かつ雑食性の高い傾向を象徴するような存在だ。彼がこれまで発表してきた作品はたしかにガラージのリズムであったり、ピッチを早めたヴォーカル・サンプルであったり、ダブステップからの影響であったりと、既存の形容にあてはめられるものかもしれないが、彼の鮮烈さはそれらを融合させる能力にこそある。 Jesse RoseのMade To PlayからリリースされたGraphicsにとって最初のシングルとなった作品は今も強い印象を残している。表面上取り澄ました佇まいで、歪んだ輪郭ながらもこれはまさしく本物のアンセムだった。その見事なダイナミクス、奇妙ながら親しみやすい資質に私は昨年Caribouが手掛けたVirgo Fourのリミックスを思い出していた(もちろん、それぞれのサウンドは全く異なるものだが)。さて、この"Mama Grizzlies"はまず不穏なヴォーカル・デュエットで幕を開ける。カリンバと静謐なチャイムが響く中、男性のアルト・ヴォイスに絡むのはピッチに変調を施されたロボットが赤ん坊の泣き声を模したような声だ。しかし、そのララバイのような雰囲気は威勢の良い筋肉質のグルーヴに取って代わられる。まるでスピードを速めたダンスホールのリズムがぐいぐいと前に押し進めていくかのようだ。 "Colour Her Hair"は端正なジャック・ハウス・グルーヴと吐息まじりのヴォーカルがやや平凡な印象を与えかねないが、それでもやはり良く出来たトラックであることには間違いない。SBTRKTと同様に、Graphicsもまた点描画法的なアプローチをとっており、メロディはあくまでも点のように置くことでリズムの空間性を最大限に生かし、実に能動的なリスニング体験を用意するのだ。Prince Clubが手掛けた"Mama Grizzlies"のリミックスはとりたてて特筆すべきところもないベース&ドラム・ツールといったところだが、それに比べるとDavid Kenoのリミックスはなかなかの佳作といえるだろう。オリジナルには敵わないにせよ、カーニバル・オルガンとワウ・ギターをまぶしたバウンシー・ハウスとしてそつなくまとめ上げている。3つ収録されたリミックスの中では、Roskaによるキックとスネアがけたたましくぶつかり合うヴァージョンがオリジナルの特異性をうまく反映させているという点でもベストの仕上がりだろう。