Planetary Assault Systems - The Messenger

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  • Luke Slaterが持つ数ある名義の中でも、このPlanetary Assault Systems(以下PAS)名義が2009年に復活した事実は一見些細に見えてもその実決定的なものであったと言うべきだろう。90年代から00年代に彼の作品の大半で聴かれたような、粘着質で頑強なテクスチャーはよりスムーズで繊細な質感に置き換えられ、それは彼にとっての新たなホームであるBerghainを中心に勃興したポスト・インダストリアル的なムードを存分に含んだものだ。このアルバム『The Messenger』に収められた12曲においてもその潮流は貫かれてはいるものの、同時に1999年頃のPASを思わせるような獰猛さもところどころで秘められており、それが意外にもこのアルバムのハイライトになっているところが興味深い。 キックレスのアンビエント・トラック"Railer (Further Exploration)"や幻惑的な"Human Like Us"によってスムーズに導かれるこのアルバムは、"Bell Blocker"でいよいよ本格的な幕を開ける。不吉なサブベースは歪んだベルシンセと相まって視界の中を出たり入ったりし、ハイハットや抑制されたキックと駆け引きを繰り返しながら饒舌にムードを演出する。それに続く"Wriss"もヴォーカルの断片をループしブリーピーな中域がジェントルでステディなテクノを色づかせて行く。 アルバムが2/3を過ぎる頃、つまり"Rip the Cut"のあたりに差し掛かると、にわかに熱と質量が増し始める。ここで聴くことの出来るディストーションがかった質感はさながらPeacefrog期のPASを彷彿とさせるが、奇しくもこれこそがこのアルバム『The Messenger』のハイライトとなっている。ここにはSlaterがキャリア初期から武器にしているオリジナリティ、つまりうねるベース、ビッグなドラム、卓越したレイヤーといった要素がすべて詰め込まれているのだ。 しかしながら、このアルバムを最も特別なものにしている最大の要素はSlater自身の抑制された感覚だ。"Beauty in the Fear"での陰鬱さはそれに続く"Human Like Us"や"Bell Blocker"での幻惑的なシンセ・ワークの導入として巧みに機能しているが、アルバムも中盤を過ぎる頃になると、不穏なループを軸にして煙にまみれた"Kray Squid"等のトラックも"Rip the Cut"のような圧倒的トラックへの橋渡しとして実に完璧な役割を果たしていることが分かる。こうした構成の巧妙さこそこのアルバムを支える基盤であり、このアルバムは2011年屈指の作品に挙げられるだろう。