Max Loderbauer, Claudio Puntin and Samuel Rohrer - Ambiq

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  • ジャズと実験的なサウンド・デザインが交錯する場所、すなわちMax LoderbauerとRicardo Villalobosが2011年にリリースしたECMのリミックス・コンピレーション『Re:ECM』を通じてLoderbauerは素晴らしい実績を築いている。最近、彼が手がけたプロジェクト『Ambiq』はより伝統的かつダイレクトで自発的なものであり、Lauderbauerの他、ジャズ・クラリネット奏者であり打鍵楽器も担当するClaudio Puntinとパーカッションを生業とするSamuel Rohrerによるスタジオの一室での即興演奏を収めたものである。この2人は共に数多くのグループでも活動してきており、過去にはECMでもその姿を見かけることが出来た。一方で、Loderbauerは本作でも引き続きBuchla 200eシリーズのモジュラー・シンセを用いている。 『Ambiq』のオープニングでは3人の音楽家が準備運動をしているように聞こえる。"Erdkern"では、互いを伺いながらプレイしており、一体感はそれほど感じられない。しかし"Tund"では正反対に大人しめの4つ打ち形態へと素早く変化しており、反復を避けた心地よい展開を拡げている。アルバムはそれ以降、3つの音楽形態を探求している。それはつまり、密度の濃いリズム実験、メロディアスなクラリネット作品、そして隙間の多く時にノイジーなアンビエント作品のことだ。 Loderbauerと2人は安定感と優雅な空間の中を自由に駆け巡っており、清々しいという言葉以外を用いるなら、可憐な仕上がりになっていると言える。しかし、落ち着きなくどこかあてもなくプレイしているようなゆったりとした場面もあり、まるで3人が共通の目的に向かって進んでいくことが出来ない、もしくは乗り気ではないかのようにさえ思える。"Timone"はおそらくこの点が顕著に露呈している1曲だろう。8分間に渡って何となくあちこちへと音を奏でていて、それほど印象に残るものではない。時折、泣き叫ぶようにサウンドが力強く圧倒しようと声を挙げ、展開を作り出している。 『Ambiq』は非常に才能のある音楽家によって巧妙に構築され、しっかりと演奏された作品だが、もっと大胆にすることも出来たのではないかと思うような冗長な感覚が漂っている。1時間に及ぶ本作を通じて、具体的に何かが浮かび上がってくる瞬間がなく、個々の要素が交わりあうことが一切ないのだ。『Ambiq』は間違いなくプロフェッショナルな作品なのだが記憶に残るほどのトガった感覚に欠けている。
  • Tracklist
      01. Erdkern 02. Tund 03. Touching The Present 04. Tragus 05. Tangoreceptor 06. Toxic Underground 07. No Body Language 08. Timone 09. Loka 10. Talion 11. Tarantula
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