Livity Sound - Livity Sound

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  • そこには先ずPunch Drunkがあった。PeverelistことTom Fordがダブステップの実験的側面を提示するために始めたブリストル発のレーベルだ。レーベルは大きくなるにつれ、テクノやハウスによる実験、異種勾配の場へと変化したが、その根はしっかりと張り巡らされ、そしてLivity Soundが生まれたのだった。手作業によるスタンプがホワイト盤に押されただけの体裁で2010年に現れたLivity Soundは更なる境地に挑まんとするFordが進む道となった。最初のリリースとなったのは1つのトラックを2つのヴァージョン(1つはPev、もう1つはKowtonによるもの)で収録した12インチで、ジャングル、ダブステップ、テクノ、そしてダブを、ただ組み合わせるのではなく、それが全くの一つの個になるまでに繋ぎ合わせるという、とんでもないことを密かにやっていた。ごつごつとした荒涼感、ブリキのようなドラム、そして大地を揺るがすベースラインから作られたLivity Soundのトラックは当時、ヨーロッパ中で爆発的に広まっていた大人しめなハウスへの偏愛思考に対する彼らの毅然としたリアクションだ。ブリストルに住む仲間Asusuを2人の音に引き入れ、3人組となった彼らの活動により、Livity Soundはベースミュージック、テクノ、もしくは人によって呼び方は違うかもしれないが、その筋の音楽における最もエキサイティングなレーベルの1つとなった。 レーベルと同名の本コンピレーションに収録された最初の3曲を聞いてみよう。PevとKowtonによる"Raw Code" (元々はHessle Audioからリリースされたものだ)で聞くことの出来る唯一無二の重低音による一撃はまるでフリーフォールでコンクリートに叩きつけられたかのようだ。続いて収録されているのはKowtonによる"More Games"。ショットガンで的確に打ち抜いているかのような初期グライムの美学に通ずる素晴らしく荒々しいトラックだ。Pevによる重心低めに揺るがすダビーな"Erosions"と"Salt Water"は、信じられないほどタイトでしなやかなトラックだと今でも感じる。同時に、こうしたトラックを1つのパッケージにまとめることで、比較的知名度の低いAsusuにも光があたっており、他のトラックでブロークンビーツが猛威を振るう中、Asusuによるテクノ寄りの作品は素晴らしい中和剤として機能する。ささやくような静寂と緊張感を纏った"Too Much Time Has Passed"とゴムのような柔軟さを持った"Rendering"では、4つ打ちという厳格な枠組の中でさえ、いかにLivity Soundが提示するテンプレートが感動的なものであるのかを明らかにしている。 他の優良コンピレーションがそうであるように、『Livity Sound』もいくつかの新曲を携えている(そのシングルカットはこの記事が読まれるころには発売されているはずだ)。現在、彼らはレーベルスタートから数年間経っているが、アイデアを詰め込みすぎて逆効果になるような気配はない。例えば、PevとKowtonの新たな共作"End Point"はPunch Drunkからの傑作"Clunk Click Evry Trip"の続編かのようなシンセを存分に使用した激震トラックで素晴らしい出来だ。『Livity Sound』の収録曲は単に年代順に並べていないこともあり、コンピレーションとは分かっていても、実際はアルバムのように感じ、これは彼らの美学とビジョンの明確さが融合していることを裏付けている。3人の異なるプロデューサーによる3年経っても古びることのないトラックはまるで同じセッションの中で作られてきたかのようにさえ聞こえる。たとえこれらのトラックを熟知していたとしても、『Livity Sound』に収められたこの至高の2時間を聞けば、ふたたび興奮せずにはいられない。
  • Tracklist
      CD1 01. Pev & Kowton - Beneath Radar (Kowton Version) 02. Pev & Kowton - Raw Code 03. Kowton - More Games 04. Pev - Aztec Chant 05. Pev & Asusu - Remnants 06. Asusu - Sister 07. Pev - Erosions 08. Asusu - Rendering 09. Pev - Livity CD2 01. Pev & Asusu - Surge 02. Kowton - Jam01 03. Pev & Kowton - Vapours 04. Asusu - Velez 05. Pev & Kowton - Junked 06. Pev - Saltwater 07. Pev & Kowton - End Point 08. Asusu - Too Much Time Has Passed 09. Pev & Kowton - Beneath Radar (Pev Version)
RA