- ノルウェー流バレアリックハウス
- Henning Severudは少量ながらハイクオリティのオリジナルトラックに加え、リミックスやエディットものを発表しながら、現在におけるディスコ/ハウス色の強いバレアリックサウンドの牽引者として頭角を現してきた。ノルウェーのベルゲン近郊で育ったSeverud。そのため、最初に(そして、長期にわたって)影響を受けたのが90年代後半の奇作『Nedi Myra』をきっかけに知ったというBjørn Torskeであるのも納得だ。Telephonesとして活動するSeverudは遊び心のある眩くグルーヴィーなDJ/プロデューサーとしてサウンドに磨きをかけてきた。そして、2015年にバレアリックサウンドのパイオニアJose Padillaと共同プロデュースでアルバム(英語サイト)を制作することが報じられたのは非常に有意義なニュースだった。「30年の歳の差があるけど、ふたりのルーツは同じなんだ。精神的にも音楽的にもね」と当時のSeverudは語っている(彼は同アルバムで出色のトラックだった"Day One"を手掛けている)。
今月、Severudは初のソロアルバム『Vive Telemetry』をGerd JansonのRunning Backからリリースした。収録の12曲を通じて聞こえてくるのは、至極のアンビエンス、簡素なコズミック、パーカッシブなアレンジ、ピアノスタブ、そして、夜明けと夕暮れのどちらでもかけられそうなディープハウス系サウンドだ。『Vibe Telemetry』で興味深いのは、フィールドレコーディングが使われているところだ。Severudが自国のノルウェーの他、イギリス、メキシコ、イビザ、イタリア、クロアチア、彼の現住地ベルリンなど、あらゆる場所で録音したサウンドの断片が全体に散りばめられ、同作に息吹が吹き込まれている。
彼の手掛けたRA podcastでは、Severudのクラブセットのムードが再現されている。どこを聞いてもハウスのビートが鼓動しており、その枠組みにチャイム、さえずり、激しいサックスといった素材があしらわれ、『Vibe Telemerty』のように隅々まで色彩豊かなミックスに仕上がっている。
近況報告をお願いします
移動とDJだね。あと、蚊に刺されたところが痒いよ。ブラジルで素晴らしいギグが2回あったんだ。そのあと、メキシコにいる彼女を訪ねて、ほぼ直行でアジアツアーに行って、昨日帰ってきたところ。
今回の制作環境を教えて下さい
ベルリンにある自分のスタジオで録った。Technics SL-1200のターンテーブル2台と、PioneerのミキサーDJM-300を1台、あと、Sameheadsで働いている友達から借りたCDJを1台を使ったよ。それからAbletonで針飛びしたところをつなぎ合わせて、EQ調整をした。
今回のミックスで意識したことは何でしたか?
僕がクラブでまわしそうなものや雰囲気が伝わるミックスにしたかった。レコードバックの中によく入っていて、自分がすごく気に入っているものを使ってね。最近のものや昔からのお気に入りを使ったよ。一晩のクラブイベントの一部を切り取って90分にまとめたもので、もしかしたら少しごちゃごちゃしているかもしれないけど、少なくとも僕のサウンドにはなっていると思う。
先日、ファーストアルバムがリリースされました。どれくらい前からアルバムを出したいと考えていたんでしょうか?
アルバムの制作に2年くらいかけた。たくさんのパーツや、音源収集、構想、素材作りなんかにはもっと時間がかかっている。いずれアルバムで使おうと思っていたからね。そのときがようやく来たんだ。アルバムだからといって完全に違うことをやりたくはなかった。むしろ、自分のサウンドを拡大したり、自分の幅を広げたりしたかった。大きなイメージを描いて、自分の音楽ルーツの雰囲気を緻密に作っていくんだ。これまでの12インチやEPよりも多様性があるけど、以前と同じ空間に存在する作品だよ。
世界中から集めてきたフィールドレコーディングが使われていますが、どのように作品へ織り込んでいきましたか?
訪れた色んな場所でいつもレコーディングするようにしている。曲に使うものじゃなくても、後で参考にしたり、アイデアにしたり、単にその場所の感じを思い出すためにレコーディングしているんだ。たくさんのレコーディングを聞き返してエディット/加工してから、シンセやフルートのおもちゃで似せたサウンドや他のサンプルに混ぜ合わせた。サウンドやエフェクト、それに空間を新しく生み出すときは、フィールドレコーディングをほとんど加工しないまま使っていて、それをリサンプリングして、レイヤーにしたり、手を加えたりした。
今後の予定を教えてください
ベルリンに住んで数か月になるんだ。今後は以前から取り組んでいるものや新曲をスタジオで制作したり、リミックスを仕上げたり、いくつかギグでヨーロッパをまわる予定。11月11日にロンドンのCorsica StudiosでまたDJするよ。あと、アムステルダムで友達のFett Burgerとバック・トゥ・バックで一晩中プレイする。これまでにも何度かやっていて、いつも楽しいんだよね。ナポリのパーティーにも出るよ。それ以外の日には料理をたくさんしようと思っている。もしかしたら泳ぎにいって、友達とビールで一杯やるかもね。