- 豊潤で感情性の高いテクノ・セッション
- David Letellierは元々DJではなかったが、だからこそミックスが面白いのかもしれない。「DJに何が必要なのかも知らない」と彼は2012年にTodd Burnsとのインタビューで言っていた。「彼らに何が必要なのか訊いたこともない」。これは彼が自身の音楽について語っていたときに言った言葉だが、ミックスもプロデューサー的な観点で制作していることは明白だ。彼は丁寧に複数の楽曲を重ね合わせ、徐々に進化していく巨大な音の塊を作り上げる。これまでこのテクニックを用いて彼はElectronic ExplorationsとSmoke Machineのポッドキャストを手がけてきたが、今回は我々のために提供してくれた素晴らしい1時間のセッションで、このセンスを見せつける。
Letellierはいつだって我々の興味をそそってきた。芯のブレないレーベル、Raster-Notonから発表された5枚のアルバムは、アイディアやインスピレーションが溢れ出る作品であり、根底には明確なコンセプトがあった。2012年の『OR』では、彼は消費者文化と経済の崩壊を取り上げた。続編の『Solens Arc』は、収録された12曲が4つの“アーチ/Arc”を構成していた。去年リリースされた『Cory Arcane』は作品名になっている架空の人物の頭の中を描いており、Letellierによるエッセイも同封されていた。彼の作品群の音楽性を簡単に説明することは難しい。『OR』を制作したころ、Letellierの音楽にはテクノの存在感が増していた。以降、彼はテクノ・シーンで受け入れられ、クラブで定期的にプレイしているが、彼はひとつのことに執着することはなく、幅広いテンポやリズムを擁した個性的なトラックを手がけてきた。例えば、『Cory Arcane』にはきしみながら進む102 BPMのループ("Dark Barker")、ドラマチックな4つ打ち("These Are My Rivers")、そして先進的なドラム&ベース的なトラック("Safran")が収録されていた。RA.519では、Letellierはより統一感のある世界観を見せており、豊潤で感情性の高いテクノにフォーカスしているが、その仕上がりの満足感は相変わらずだ。
近況報告をお願いします
年始はギグで忙しかった。最近はライブと同じぐらいの頻度でDJをしている。それは自分にとっては珍しいことで、新しい可能性を感じているよ。ここ数ヶ月で最も印象的だったギグはロンドンのCorsica Studios、ソロとしても、自分のバンド・プロジェクトであるSUMSとしてもプレイしたUnsound Adelaide、そしてBerghainで最近やったRaster-Notonの20周年。とても強烈で感情的な夜だったよ。
ミックスの制作環境を教えてください
パソコンで数ヶ月かけて制作したんだ。
ミックスのコンセプトについて教えてください
まずは今回のミックスに収録したトラックを作ってくれたアーティストに感謝の気持ちを述べたい。このミックスに入っていることを喜んでくれたら本当に嬉しい。DJプレイのときも、ミックスを作るときも、楽曲を制作しているアーティストたちには本当に感謝しているんだ。トラックを作る作業にどれだけ汗を流して、情熱を費やしているかわかるからね。可能なかぎりリスペクトして曲を扱いたいんだ。
以前はほぼライブしかやってなかったんだが、だいたい2年ぐらい前からDJ をよくやるようになった。ライブとDJのハイブリッドみたいなセットで、自分の曲やループを加えたり、小さなモジュラー・シンセやドラム・マシンを使ったりしていた。最初はただお願いされたからDJしていただけなんだが、場合によってはDJのほうが合っていると感じることもあるんだ。DJだと自分のトラックのみを使ったライブよりも長いセットをやることができるし、他の人の楽曲をじっくり聴いてキュレーターの立場で曲を流すことができる。自分の楽曲の粗探しをしなくて済むから気楽なんだ。
このミックスは、DJをやるときと同じ信念で制作した。聴く人の身体を揺らしつつ、頭を使わせるような、そんな絶妙なバランス感のあるセットをやることだ。メロディー性があって包み込まれるような世界観にしたかったんだけど、ヘッドフォンで聴いたり、家で聴いても楽しめるものにしたかったから、ゆっくりと分解していき、展開するにつれよりアブストラクトになるように作ったんだ。
Raster-Notonのインスタレーション、White Circleについて教えてください
White Circleは、Raster-Notonの20周年を祝福するために皆で制作した音と光のインスタレーションで、ZKMとHalle Am Berghainで公開したんだ。アーティストそれぞれが各々のアイディアを反映させることができる真っさらのキャンバスでありながら、レーベルそのものと同様に、一貫した美学があるものにしようとした。レーベルは様々な個性や芸術的表現の成長を促すアーティスト・プラットフォームなんだ。
いままでで一番気に入っているRaster-Noton作品やアーティストを挙げるとしたら?
アーティストの大半は友達だからこれは難しい質問だね。DashaのRaster-Notonアルバムは大好きで、よくDJでかけるんだ。あと、もちろんEmptysetは未だにお気に入りのプロデューサーだ。最近のBerghainのショーケースではKyokaのセットに非常に感心させられたから、彼女の次のリリースを今楽しみにしているんだ。
今後の予定は?
結構前からStroboscopic Artefactsでリリースするアルバムを制作していて、ようやく完成が見えてきたんだ。とてもワクワクしているよ。
あと、これまでヨーロッパやオーストラリアでライブをしてきたSUMSだが、レコーディングを開始したんだ。元々はコラボレーションで始まったこのプロジェクトは、どんどんバンドっぽくなってきている。方向性も明確になってきたんだ。今はギター、ドラム、キーボードをレコーディングしている。普段制作している環境から飛び出して制作するのはとても刺激的で、自分の曲制作にも良い影響を与えているんだ。
TracklistCio d'Or - XXXIII - Semantica
Anxur - Volo 2 - Eerie Records
Imaginary softwoods - crystal pond - Archives Interieures
Acronym - The Eye - Northern Electronics
Abdulla Rashim & Axel Hallqvist - Mark -Claudio PRC Remix - Semantica
Caterina Barbieri - Scratches on the readable surface - unreleased yet
Zadig - Beyond the Portal of Madness - Tresor Records
Mike Parker - Spiral Curves - Studio R°
Sleeparchive - Five cubes on twenty five squares -PEARL_Remix - Subspecies
Alva Noto - Xerrox Radieuse - raster-noton
Etapp Kyle - Opto - Unterton
In Aeternam Vale - 62,54hz - Jealous God
Laurie Spiegel - Drums - Unseen Worlds
Autak - Sanctuary - unreleased yet
Pris - Domestic - Avian
Helena Hauff - The First Time He Thought, He Died - Werkdiscs / Ninja Tune
Dimitris Petsetakis - The Prophecy - Into the Light
Skee Mask - Torpor 12 - Session - Ilian Tape
Zemi17 - Rangda -The Bunker New York
Rebekah - Orbital - Mord
Kamikaze Space Program - Clapper - Trust
Kuf - Ahmet - Float records
Voiski - With Someone Else - CCCP
Function / Inland - Rhyl - Infrastructure New York
YYYY - The Terms Of Our Surrender - Planet Rhythm
Jo Johnson - In the Shadow of the Workhouse - Further Records
DJ Deep & Roman Poncet present Adventice - Extraction_Force - Tresor Records
Reeko - Capitulo 2 - Mental Disorder
Radial - Asiel - Mord
2562 - Vibedoctor - Delsin records
Sciahri - Ambiguity - Black Opal
Steve Reich - Six Marimbas - Nonesuch
Steve Moore - Frigia - L.I.E.S
Akkord - 3dOS - Houndstooth
Surgeon - Zilla - SRX
Blawan - Mine Oh Mine - Ternesc
Struction - Strukture - Ilian Tape
DJ Boss - Judit - Planet Rhythm
Campbell Irvine - Thread Laid Bare on the Ground - Infrastructure New York
Yair Elazar Glotman - Lamant -Coda - Subtext
MKFN - Terrain - Touchin’ Bass
Second Woman - 100407jd7 - Spectrum Spools