R&Sの元従業員Raji RagsがレーベルとCEOのRenaat Vandepapeliereを不当解雇と人種差別で提訴

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  • RAが入手した40ページに及ぶ書面では、「ハラスメントと解雇後の被害」についても訴えている。
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  • コンテンツの警告: この記事には反ユダヤ主義やナチズム、アドルフ・ヒトラーの画像や記述が含まれます。 Raji Rags名義でも知られるR&S Recordsの元従業員Raj Chaudhurが、同レーベルとCEO兼共同創設者であるRenaat Vandepapeliereを英国の労働審判所に提訴した。 フリーランスとしてレーベルのA&Rを担当していたChaudhuriは2019年5月から2020年9月にかけてR&S Records Limitedで働いていた。彼は最初の13ヶ月間、月単位の雇用契約を更新し続けたが、2020年7月に1年契約で合意。そして新しい契約が始まってから3ヶ月目の9月29日に、Vandepapeliereから不当に解雇されたと彼は主張する。 不当解雇疑惑から2週間後の10月14日、Chaudhuriはソーシャルメディアで自身の退職を説明するステートメントを発表した。「Renaat Vandepapeliere氏と一緒に仕事をして、黒人と女性アーティストを十分にサポートしていない会社にエネルギーを注ぐ気にはなれません」と彼は綴った。 その後、Chaudhuriはこの問題をさらに追求することを決意し、2021年1月21日、UKの労働審判所に申立理由書を提出。今回Resident AdvisorBBCが、その40ページに及ぶ書類を入手した。 書面の中で、ChaudhuriはR&S在職中に起こった出来事の詳細を説明している。不当解雇のほか、彼は1983年から同レーベルを運営するVandepapeliereが関与していた「差別、ハラスメント、迫害、そして雇用後の被害」とされる複数の事例を詳細に記した。彼の主張の多くは、Vandepapeliereとのメールやテキストメッセージのスクリーンショットによって裏付けられている。尚、この記事の引用部分は、特に明記されていない限り、法廷に提出された申立理由書から引用している。 RAでは、Vandepapeliereにこれらの疑惑全てへの回答を求めた。 以下のステートメントは、VandepapeliereとR&S Records Limitedの代理人による、これらの疑惑に対する返答である。
    まだこちらに申立書が届いてすらいないため、裁判の準備もできておりませんが、このようなネガティブで早まった風評を踏まえると、対応するしかないと考えています。 私たちは、1968年セフト法に基づく恐喝と脅迫に該当すると考え、Chaudhuri氏を警察に通報しました。9月29日、Chaudhuri氏はRenaat Vandepapeliere氏にメールを送り、そこには決して発生することのない潜在的な将来の仕事のために1万ポンドを支払わなければ、彼を公の場で「潰す」と書かれていました。 Chaudhuri氏はフリーランサーで、従業員であれば重大な不正行為に該当するような理由で不満を募らせ、解雇されました。 Chaudhuri氏が提出した法廷訴訟は、それ自体が何の証明にもならないものです。Chaudhuri氏は、Renaat Vandepapeliere氏を他の法的手続きから遠ざけるために攻撃し、Renaat Vandepapeliere氏が金銭的な要求に屈しない限り、Chaudhuri氏が脅迫したような悪質な損害を与えるために、訴訟を起こしたのではないかと私たちは考えています。 Renaat Vandepapeliere氏は間違いなく人種差別主義者ではありませんし、R&S Recordsの全員が平等性を尊重しています。私たちは現在、このような偽りの、真実味のない有害な主張に対し、名誉毀損の申し立てを個別に行うことについて、独自にアドバイスを受けています。Chaudhuri氏の発言や彼の申し立てには、何の真実性もありません。 私たちはこの件をマスコミに訴えるつもりはありませんし、正義が勝つと確信しています。
    申立書の中で、ChaudhuriはVandepapelierを人種差別と性差別を行ったとして繰り返し非難している。Chaudhuriは、自身がより多くの黒人や女性アーティストと契約しようとすることで、レーベルのアウトプットを多様化させることに乗り出したと話している(R&Sに近い関係者によると、同レーベルが38年の歴史の中で女性アーティストと契約したのはPaula Templeの1人だけだったという)。 新しいアーティストはすべてVandepapeliereのサインを貰わなければならなかった。 Chaudhuriは、黒人や女性のアーティストがVandepapeliereの承認を得るのは困難だと分かったと語る。この上司がレーベルから離れている間に確保したとされるChaudhuriの最初の契約数件は、ガーナ、パキスタン、ポルトガル、コンゴ民主共和国の非白人アーティストをフィーチャーしたものだった。ChaudhuriによるとVandepapeliereは彼らの音楽を好きではなかったそうで、「無意味なもの」と呼んでいたという。 Chaudhuriによると、Vandepapeliereの女性への振る舞いにも懸念が高まっていたようだ。例えば2019年11月、この彼の上司はChaudhuriに、あるInstagram投稿を送り、上半身裸の女性3人を評価するよう求めたという。 また、2020年5月にGeorge Floydが亡くなったことを受け、VandepapeliereはBlack Lives Matterの抗議活動に連帯して、レーベルのソーシャルメディアのプラットフォームに黒い四角形を投稿しようとしたとされている。この行動を、Chaudhuriが不十分だと感じた。ChaudhuriがVandepapeliereにR&Sの成功を支えているハウスとテクノという2つのジャンルが「ブラックカルチャーから生まれた」と説明しようとした時、Vandepapeliereはこう答えたとされる。「わお、話が飛躍しすぎじゃないか。テクノは至って白人のものだ、エレクトロニック・ミュージックの歴史を見てこい」 数週間後、2018年にR&SからEP「Technosis」をリリースしたコロンビア人アーティスト、HermeticsことSantiago Niño RodriguezのFacebookアカウントから、2015年と2016年の反ユダヤ的な投稿がオンライン上に再浮上した。投稿には、アドルフ・ヒトラーの写真や「アドルフ・ヒトラー対ユダヤの世界秩序」と題されたYouTube動画、Rodriguezがスペイン語で書いた「No hubo Holocausto」(「ホロコーストはなかった」)という言葉が含まれていた。
    Vandepapeliereは2018年にRodriguezとR&Sの契約を結んだ。投稿が再浮上した際には、R&SのバックカタログからRodriguezの音楽をすべて削除することを含め、「Rodriguezとの関係を完全に断ち切る」ようVandepapeliereに促したとChaudhuriは語っている。VandepapeliereはRodriguezに「何も投稿するな」とメールを送ったとされているが、それ以上の行動を取ることは拒否したという。「本当に彼のトラックを削除することは...ありえない」Vandepapeliereは述べた。「あの子供には危険を知らせた。それでいいだろう。」Chaudhuriはこう返信した。「彼は子供じゃない。彼はヒトラーに賛同する完全な大人だ」 その後のChaudhuriへのメールで、VandepapeliereはRodriguezの投稿を「間違い 」と呼び、Chaudhuriに「遠くから人を判断するんじゃないぞ」と諭したとされている。Rodriguezの楽曲は今もR&Sで販売されている。 この不仲は、2020年6月3日にVandepapeliereがChaudhuriに送ったメールから始まった“質問がある”という件名の別のメールでも続いた。「インドはどうなのか...。あそこには完全に奴隷が存在する」とVandepapeliereは綴った。「アフリカは...黒人同士が殺し合いをしている。」Chaudhuriはこう返信した。「奴隷制は好きではない。黒人同士の暴力も好きではない。反ユダヤ主義やナチスも好きではない。」Chaudhuriはそこから彼らの仕事上の関係が「非常に緊迫」していったと感じたという。 Chaudhuriが不法解雇疑惑に至ったと考える一連の出来事は、2020年7月初旬に始まった。Vandepapeliereは、Chaudhuriが選んだ音楽をフィーチャーした6枚の12インチとコンピレーションを発売することに同意した。VandepapeliereはこのレコードをメインのR&Sレーベルからではなく、RV Traxに似たシリーズとして出すことを望んでいたといわれている。 RAが確認した申立書の中に記載されているEメールには、このプロジェクトのために毎月1,000ポンドが12ヶ月間Chaudhuriに支払われ、さらに7枚のレコードすべての利益を分け合うことにChaudhuriとVandepapeliereが合意したことが示されている。この新しい契約は彼の以前のフリーランス契約に取って代わるものであった。Chaudhuriは新しい仕事について正式な書面による契約書を求めたが、Vandepapeliereは「君は私のメールを受け取った」そして「私は約束を守る人間だ」と伝えたといわれている。書面による契約書は作成されなかった。 Chaudhuriが不法解雇されたと主張している2020年9月には、R&Sからリリースしているロサンゼルス在住の黒人アーティスト、Eddington Againが、Vandepapeliereとのメールのスクリーンショットをシェアしており、その中で彼はレーベルに黒人や女性アーティストがいないことについてこのR&Sのボスに異議を唱えたという。当時彼が契約を狙っていた新しいアーティストを引き合いに出し、Vandepapeliereは「私は今、私の人生をフルフォーカスで過ごすことができる完全なる純血の黒人アーティストを見つけたことを願っている」と返信した。 Againのこの投稿は拡散され、多くのファンやアーティスト、業界関係者が、Vandepapeliereにその発言に対する謝罪を求めた。9月27日にChaudhuriらに送られたメールの中で、Vandepapeliereは当初謝罪を拒否し、“pure breed ”はフランドル語の比喩で、翻訳に失敗したものだと主張していた。これを受けて、LoneやSpecial Requestなど複数のアーティストがVandepapeliereの言葉の選択を非難するステートメントを発表した。
    9月28日、ChaudhuriとVandepapeliereはテキストメッセージを交わした。Chaudhuriが送ったそのうちの1通で、彼はVandepapeliereに「職務」から「身を引いて」、「裏方でクリエイティブな仕事をする」ことを提案した。VandepapeliereはChaudhuriが「一線を越えた」と言い、「R&Sは私の道を行く」と返信した。翌日の9月29日、Vandepapeliereは事前通知なしに、Chaudhuriを即時解雇を言い渡したとされている。「会社を支持する強力なチームがいないと、私はこれ以上働くことができない」と記されていた。 「私は仕事を失うことに打ちのめされました」とChaudhuriは話す。「正しいことをして、彼に正しいことをさせようとしていたのに、解雇されたことは特に胸が締め付けられる思いでした。それに私は、契約途中にあった多様なアーティストのおかげで、レーベルに新たな成功と信頼性をもたらす瀬戸際にいたのです」 不法に解雇されたと感じたChaudhuriはVandepapeliereに連絡をし、10ヶ月分の賃金の支払いを求めた。また、もしそれが支払われなかったら、Vandepapeliereの「差別的行為」を公表するオープンレターを出すと脅した。その後、1ヶ月分の賃金のみが振り込まれた。 一週間後、失業中のChaudhuriは、ある有名な音楽会社から仕事のオファーを受けた。(Chaudhuriはその会社の名前を伏せるよう要求した。)仕事のオファーはあったものの、その後取り消されたという。Chaudhuriは、Vandepapeliereが11月12日にIconic Underground Magazineを通じて公開されたステートメントをその音楽会社のトップに送ったと主張する。ステートメントの中で、彼は「メディアにオープンレターを送ると脅された」後に“会社の元コンサルタント”との関係が“解消”されたと述べている。Chaudhuriはこの一連の出来事に異議を唱えており、彼は疑惑の脅迫をする前に解雇されたと主張している。 このような場合の通常の手続きとして、Vandepapeliereにはまもなく労働審判所から申立書が送られるのだが、それはすでに個人的に彼の手に渡っている。ロンドンで行われる審問の日程はまだ決まっていない。 Photo credit: Facebook (Renaat Vandepapeliere)
RA