Loefahには明確なビジョンがある。そのビジョンは彼にしか見ることができないもので、そして彼自身もどう説明していいか今ひとつ分かっておらず、LoefahことPeter Livingstoneは、自分のレーベルSwamp 81からリリースする作品の説明に「Swampもの」という言葉を良く使っている。このように上手く説明できないのは、「あえてしない」わけではなく、カテゴライズされたくないからでもない。2010年3月にリリースしたAddison Grooveの”FootCcrab”によって周囲の状況が変わったSwamp 81は、「曖昧」という名のスリリングな波に乗り続けており、ポスト-ダブステップのロンドンから出現した最も刺激的かつ重要なレーベルの1つに育っている。

ロンドンのダブステップの話をすると、Peter Livingstoneはシーンにおいて最も刺激的かつ最重要レーベルと言えるDMZのオーナーの1人である。幼少時代からの友人、MalaとCokiを含めた3人は、クラシックな12インチを多数リリースし、また伝説と呼ばれるパーティーを開催してきたことから、このジャンルのサウンドと方向性の形成に大きく関与したと言える存在だ。そしてダブステップはUKから世界に広がり、DMZもその勢いと共に世界を旅してきたが、2007年に転機が訪れる。Peter Livingstoneはそこに何も感じなくなってしまったのだ。本人は当時の気持ちについて、「詐欺をしている気分」と説明している。ダブステップが向かっていた方向性なのか、それとも彼自身の好みが変わってきたのか。何かを変える時が来たということを本人は感じ取っていた。

Swamp 81を立ち上げるまでの期間、音楽的に、そしてその他の部分も含めて、あなたは何をどう感じていたんでしょう？

ダブステップと呼ばれるものを俺たちは始めて、自分たちの好きなようにやっていた。しばらくは順調だったよ。で、スタジオに入って曲（2007年の”Disko Rekah”）を作った…。　まぁ「ダブステップ」を作ったわけだ。それまでの俺はただ自由に曲を作っていた。でも”Disko Rekah”の時は、曲を作って、リリースしたくなかったけどリリースして、それがヒットするって感じだった。自分の曲を聴くたびに「こりゃ違うぜ」って感じていた。自分の中で何かが全然違うって感覚だ。あの時が、全てを狂わせる最初の「ヒビ」みたいなものだったのを憶えているな。

その「ヒビ」はどのように生まれてきたんでしょう？

あの時期は全てが「詐欺している」みたいな感じだった。真実じゃなかった。俺は曲を作ったけれど、自分では全然納得できなかったし、「客を楽しませる」と「自分のやりたい音楽をやる」の狭間にいたって感じさ。色を混ぜすぎると、結局汚い色になっちまうだろ？　俺の気分はそういう状態だった。何にも上手くいっていなかったし、イラついていた。でもシーンは育っていたし、ダブステップの人気は上がってきていた。俺もかなり多くのDJをこなしていて、金もかなり稼いでいた。その状態を維持するというプレッシャーを感じていたんだ。

当時からMala、Coki、Skream、Benga、Distance、Pinch、Kode9は親友だったから、ダブプレートの確保は問題じゃなかった。だからDJセットは比較的新鮮に保つことができていたけど、それが1年位続いた時に、突然自分の手元にある音楽にピンと来なくなった。いいと思えたのはMalaの作った数曲だけになっていた。でもMalaと一緒にDJする時が多かったから、奴の曲はあまりかけることができなかった。それで、じゃあ自分で作ろうって思ったんだけど、それも上手く行かなかった。それでなんていうか、上手く言えないけど、客からの反応を得るためのプレイを始めたのさ。Skreamのトラックみたいなのを多くかけた。俺が好きな曲だけをさ。でもバラエティが少なかった。客のためにプレイしていた。それで、俺はただ客のためにかけているだけで、自分が知らないトラックや、自分に関係ないトラック、そして別にいいとさえ思っていないトラックをかけているってことに気が付いたんだ。

Swamp 81を始めたことについて教えてもらえますか？

レーベルを始めることについてはかなり前から考えていた。それで、レーベルをやろうとして、luke.envoyの”M.U.G.E.N”をリリースしようとしたんだけど、Wonderlandが彼と契約してね。だから俺は腰を据えてやろうって思ったんだ。誰とも契約しないで、とにかく自分が好きな音楽を待とうって思った。

どこからともなく凄い数のデモが送られてきたけど、大半がクソでさ。だから「全部聴いてられるかよ。自分が混乱するだけだ」って思った。普通は5曲に1曲凄い曲があったら、というより、たとえ5曲に1曲が「良い」程度だとしても、満足できるはずだけど、俺の場合は100曲に1曲って感じだった。で、何故かKryptic Mindsとチャットする機会に恵まれたんだ。ある金曜の晩に曲をいくつか送ってくれて、俺はちゃんと聴こうって気持ちになってたから、「よし、聴いてみよう」って聴いてみたら、「凄い！　最高だ！　これが俺の求めている感じだ」って内容だった。いわゆるダブステップじゃなかった。ダブステップは好きなようにやれる音楽スタイルで、そこが強みなんだけど、とにかく俺が信じるダブステップがそこに詰まっていた。奴らの空間の使い方、Metalheadzの系譜を継承していた感じ、あとはサンプルの使い方が気に入った。上手く言えないけど、ピッタリきたのさ。

"客はただ困惑して突っ立っていた。理解できな
かったんだ。でもフロアには残っていた。
残って、最終的には理解した"

そのトラックはそれまでに聴いていたものとはかけ離れたものでした？

当時としてはそうだ。あんなトラックはなかったね。シーンはそこまでブロステップ（brostep）じゃなかったけど、RuskoとCaspaの時代だった。BengaとSkreamは既にシーンにいたけど、中心はRuskoとCaspaだった。で、そこにいきなりKriptic Mindsが登場して、やろう！ってことになった。

奴らの音楽は素晴らしいと思ったけど、数枚のリリースの後に「確かにいい音楽だが、今の音なのか？　2006年頃の音じゃないか？」と思った。自分たちをパロディー化していくような流れにはしたくなかった。当時はKode9にも助けられたね。奴がHyperdubでやっていたことは全部関係ないって感じだったからな。

そしてTony Headhunter（Addison Groove）が俺に”Footcrab”を送ってきて、俺は「いいぞ。これだ」って思った。奴は他の奴らにもトラックを送っていて、そいつらがかけていたのを聴いたけど、奇妙な感じだった。セットにしっくりくる感じじゃなかった。でも俺は「こういう感じはダブステップ時代に味わったぞ」って思った。俺たちがダブステップを始めた時は誰も理解しなかったからな。俺たちはビートが殆どないようなサブベースだけのトラックをかけていて、客はどうしたらいいか理解できていなかった。フロアの客は踊ろうとするんだけど、困惑して突っ立っている感じだった。理解できなかったのさ。でもフロアには残っていた。残って、最終的には理解した。数年かかったけど、彼らは理解してくれた。だから、俺は人前に立って、そいつらを躍らせない方法について知識があったのさ。新しいビートをかけることでそういう状況を作れた。俺はそのやり方を知っていたんだ。

トラックに対する最初のリアクションはどうでしたか？

何人かは気に入ってくれたけど、大抵の奴らは「何だこりゃ？」って感じだったな。好きか嫌いかのどちらかだった。だから俺が好きじゃないトラックを何回もかけるより断然楽しかった。その後にAddison Grooveがまた数曲送ってきて、Ramadanman（Pearson Sound）が”Work Them”なんかを送ってきた。当時Ramadanmanは2枚組（2010年の”Ramadanman EP”）を既にリリースしていて、俺はその中の数曲に本当にぶちのめされたよ。ニューヨークのDave Qが奴はチェックしておけって俺に言ってきていたから、何年も前から奴の音楽は聴いていて、それまでは「なるほどな」程度だったけど、そのタイミングでいきなり「凄いな！」って感じるようになった。それで連絡を取って、彼のトラックを何曲かかけている時期に、奴が「これはSwampに向いていると思うぜ」って言って、”Work Them”を送ってきたのさ。

俺は当時沢山のダブステップのイベントに呼ばれていたけど、エージェントにメジャーなイベントの出演は外してくれって頼んだ。俺はビッグネームの仲間入りをしたくなかったのさ。自分には合わないって感じたんだ。当時の俺は1時間のセットのヨーロッパツアーなんかをやっていて、最初の30分間はSwampの作品をかけて、最後の30分間はKryptic Mindsみたいなダブステップに古いトラックを混ぜながらプレイしていた。客は凄いことになってたよ。何が起きているのか理解できていなかった。オランダのデフェンター（Deventer）って街でプレイした時なんか、1人が怒ってステージに上がってきた。奴は胸に大きく「Dubstep」って書かれたTシャツ（Run DMCのロゴを真似たもの）を着ててさ。で、ブースの目の前に立って、俺を指さして「ダブステップかけろよ！」って言ってきた。

ワオ。

凄いだろ？　俺は奴に投げキッスしたんだけど、奴はバランスを崩したんだ。かなり高い所まで登ってきたから、ジャンプして降りる訳にもいかなくて、奴はどうしたらいいのか分からなくなって、結局恥ずかしい感じでステージから連れ去られたんだ。俺は軽く拍手して奴を送りだしたね。

Addison Grooveがトラックを送ってきた時、彼のルーツがどこにあるのか知っていましたか？

全然知らなかった。奴や友達から「Jukeって知ってるか？」って話は聞いてたけど、俺はプロデューサーの名前かと思ってた。俺はAddison Grooveはエレクトロとか、オールドスクールなマイアミ系のヒップホップとかが好きなのかと思ってたし、Ramadanmanはロンドン発信のバルチモア系だと思ってた。で、SpinnやRashadを聴いて、「ああ、なるほどね」って思ったよ。

個人的に何か感じるものがありました？

普通だったね。ヤバい曲も数曲あるけど、多くはどうでもいい感じの曲だ。あと、かなり人気が出たから、もうこの先はないと思っている。音楽としての進化もあまりなかったと思う。実際イギリスという文脈からもややずれている感じがするし。ちょっと変に感じるんだ。上手く言えないけど。ただ、正直言えばいい音楽だとは思う。それだけだな。この前Kode9がFabricでJukeのセットを披露していたけど、俺は酔っ払って楽しい時間を過ごせたね。

でも”Footcrab”がリリースされた後、周りが「Swamp 81＝Jukeレーベル」って言ってきた。Jukeについてのメールが山ほど来て、最悪のJukeトラックがどんどん送られてきた。俺のレーベルはJukeレーベルじゃないから、別に望んでもいないのにJukeを聴き過ぎることになったんだ。あの時期はとにかく乗り越えていく感じだったね。

Swamp 81の由来

Swamp 81というレーベル名は意味が含まれていそうですが、この名前にした理由は何でしょう？

21歳か22歳の頃、テレビでブリクストン暴動（1981年）についての番組を見たんだ。俺の地元のことだし、これについてみんなが話すこともあったし、地元の歴史や社会史はいつでも面白いしな。で、警察が当時「スワンプ81（Swamp 81）」作戦を実施したというくだりを見て、「ワオ、こりゃイメージできるぞ」って思ったんだ。俺はこういうピッタリはまる感じが好きなんだ。Swamp 81って言葉の響きもぐっとくるものだったし、書き文字としても見栄えが良いだろうって思った。で、「こいつは書き留めておこう。この言葉を何かに使おう」って思ったわけさ。

「ほら見てみろよ」って言いながら何かを出すんだけど、そこに説明が何も加えられないっていう状況が俺は好きなんだ。そこが大事なんだ。それがSwamp 81の価値観みたいなもんさ。欲しい時にそこにあるし、それを知りたいって思ったら、知ることが出来る。でも俺はそういう方向に仕向けないのさ。Swamp 81ではプレスの仕事は殆どしない。このインタビューみたいなものは受けるけど、レビューを書いてもらいたいからってプロモを送ったりしない。実際リリース日すら発表しないからな。俺たちはアナログ専門のリリースだし、毎日「なんでデジタルでやらないんだ？」って言われるけど、要するに俺はインディーレーベルだってことさ。俺は相手が気に入るかどうかは関係なくこの音楽をリリースする。気に入られなかったとしてもリリースする。実際”Footcrab”をリリースした時、俺は仕事を探さなきゃならないなって思ってた。ニッチなレーベルになるだろうって思ってからね。1年で売れるのは300枚位だろうって思ってたのさ。

Swamp 81ではアーティストがレーベル用にトラックを作るのか、それとも既にあるトラックに対して契約するという形のどちらですか？

俺たちは一緒に進めていく。他人が作ったトラックを契約するという時期もあったけど、今は新人の契約はしていない。今のチームに満足しているね。Boddika、Zed Bias、Pinch、Mickey Pearce、FaltyDL、Trusta、あとはもうすぐMC Chunkyがリリースする予定だ。奴は凄いトラックを作るんだ。その中からの2曲をここしばらくかけてたんだけど、クラブで上手く機能してる。ちなみに2枚組で、4曲のリリースになる。奴はマンチェスターに住んでいて、Zed Biasも同じだから、お互い助け合ってる。Zedが助けてるって感じかもな。まぁチームなんだよ。俺たちには本物のチームのヴァイブがあるんだ。そしてそれがあるから、各アーティストが違ったテイストを持てるし、俺の仕事の進め方もアーティストごとに違ってくる。

Zedとは今どういう状況なのかってことについて、お互いにかなり距離を詰めた形で仕事を進めている。今のヴァイブについて話をするんだ。まず奴が俺に沢山のトラックを送ってきて、俺が「クールだけど、そうじゃない」って感じで返す。すると奴がまた送ってくるんだけど、俺はまた「クールだけど、そうじゃない」って返す。当然奴は「じゃあ何が欲しいんだよ！」ってなるんだけど、奴にはスイング感を取り除けって言ったんだ。「あんたのスイングはいらない」って言ったんだよ。Zedはスイングのキングって感じのアーティストなんだけど、「ダメだ。あんたのスイング感を外してくれ。ニューヨークとシカゴの中間みたいなことをやろう」って言ったんだ。要するにドラムマシンのクオンタイズはシカゴなんだけど、全体のヴァイブはニューヨークみたいなトラックってことさ。で、奴は「分かった」って言って、”Music Deep Inside”を作ったんだ。2枚組でリリースされたばかりだな。

ということは、あなたが一緒に仕事をしているプロデューサーの多くが自分たちの持ち味から切り離された音楽を作っているのは意図的だということですか？

その通り。このレーベルはプロデューサーが自由になれる場所みたいなもんさ。好きなようにビートを組んで、俺のアイディアとそれがタイミングよく一致すれば、「ドカン！」って感じで俺たちは笑顔になれるわけさ。でも俺は流行りものをやる気はないからね。みんなが欲しがるようなクソは欲しくない。アーティストをアーティストたらしめているものは欲しくない。例えばZed Biasにはヴォーカルガラージを作ってほしくないんだ。Falty DLが今度リリースする奴も、奴がPlanet Muからリリースしている作品とはかなり違うし、Pinchも一緒さ。 
Pinchは俺のお気に入りのプロデューサーの1人で、1人の人間としても大好きだね。奴の制作したトラックはいつでも最高レベルにある。実を言うとSwamp 81でリリースするように脅した（笑）。マジで脅した。でも奴は親友の1人で、一緒に過ごす時間も長い。俺がブリストルでDJする時は奴の家に数日泊まってゆっくりするし。奴の作品が本当に気に入っていたけど、俺はもうBPM140をやらなくていいことに凄く満足していた。だから「なぁRob、何か違うのを作ってくれよ」って言って、奴は「ああ、でもBPM140はまだやりようがあるぜ」って返してきたから、俺は「いや、もうBPM140は終わりだ。何か別のだよ。別のものさ」って頼んで。で、奴はやってくれた。最高の作品だったよ。奴が俺のレーベルにいてくれて本当に嬉しく思うね。奴がいることは本当に意味がある。彼のような作品をリリースできて嬉しいね。

今現在もBPM140の世界は終ったと感じていますか？

いや、半年位前からまた少し面白くなってきたと思う。でもそれはもうダブステップじゃないから面白く感じてるんだ。ダブステップは現状を無視すれば、健全で、独自の動きをしているし、実際素晴らしい音楽さ。でも現在のダブステップに関しては殆ど終わったに近いね。

何故あなた自身はSwamp 81からリリースしないことに決めたのでしょう？

俺自身についてのレーベルにしたくなかったからさ。音楽についてのレーベルにしたかった。俺の作品はDMZからリリースできるし。

レーベルにとっての長期的なゴールは、アルバムを制作するアーティストのラインアップを作るということですか？

今それをやっているところさ。Boddikaが最初のアーティストになる。来年はMickey Pearceのアルバムと、Zed Biasのアルバム、それからFaltyDLだな。MC Chunkyもそのうちやるだろう。奴は凄い。既に自分のサウンドって奴を手に入れてる。奴のビートは凄く新鮮なんだ。日曜にKode9に聴かせたんだけど、奴もぶっ飛んでたよ。

MC Chunkyからの最初のリリースの予定は？

ああ、2枚組だ。19番がBoddikaの”Acid Jackson/Basement”で、20番がFaltyDLの”Mean Streets Part 2”。21番がTrustaの”Hypnotic/Feel So”で、22番がMC Chunkyだ。

何枚レコードをプレスしているのか訊いても構いませんか？

基本的に終わりはない。リプレスするからな。FaltyDLは500枚。これは限定盤だった。大抵のリリースは最初1000枚作るけど、すぐにリプレスになる。1週間で売り切れさ。”Swims”は4日間で2000枚売れたから、またすぐにリプレスした。”Sicko Cell”もそうだ。こっちはひょっとしたら2000枚以上作ったかもな。沢山の人に全部のリリースが限定盤じゃないかって言われるけど、違う。FaltyDLの奴だけさ。

まぁ情報を与えないってのは、俺はある意味クールだと思ってるんだ。みんな勝手に思い描いて、俺たちのやっていることについて勝手に議論してくれるからな。そういう風に議論してくれる人たちは、自分たちは部分的に俺たちについて知ってるって思ってる訳さ。だから俺たちの一部を彼らに与えることが重要だと思うんだ。実際彼らは一部を担っているわけだから。彼らが踊ったり、聴いたり、ラジオを聴いてくれたりしなかったら、俺は何やってるんだって話だろ。

ダブステップのフォーラムの書き込みの多さを見ると、間違いなく皆さんかなりの意見を持っていると思いますよ。

（笑）。俺は墓穴を掘ったって感じだ。というのはDJやダブステップを通じて自分のことは良く知られているからな。みんな俺がクサをかなり吸うってことも知ってると思うね。俺は滅茶苦茶ハイプな存在でもないし、別に現状に対してストレスを感じたりしないけど、正直言って、去年の暴動に関連した強盗騒ぎにはストレスを感じたな。あるグラフィックデザイナーから2つのアートワークをもらえなかったんだ。マスタリングも終わって、全部OKが出ていた状態で、アートワークだけが必要だったんだけど、それがもらえなかったのさ。

レーベルに関しては沢山のコメントが書き込まれてる…　まぁ実際はそうでもないか。”Swims”に関しては6コメント程度だったな。でもインターネット上のコメント1つは1000人分のコメントに感じるだろ？　おかしいとは思うけどな。奴らは「初めて聴いた時は最高のトラックだと思ったけど、今は別に買わなくてもいいや」とか書きやがる。でも実際は1週間で売り切れる。言いたいことわかるだろ？

"アナログ専門のレーベルをやっていたら、
一瞬で全てがダメになる可能性がある”

リリースの周囲にハイプを構築していくのはダブプレートカルチャーだと感じている人がいると思いますが、それについては同意しますか？

「はい」でもあり、「いいえ」でもあるな。俺はダブプレートカルチャーの人間だし、プロモがDJの中で話題になっていくことに対しても賛成だ。そういう意味では「はい」だ。でも、自分のためだけに利用しているとしたら「いいえ」だね。でも、とにかく、俺は人前に出て行って「あのトラックはこれだ」って言う気はない。わからないからって文句を言うなって思うね。俺がドラムンベースのレコードを買っていた時、Prototype Recordingsの作品は聴いてからリリースされるまで2年間も待たなきゃならなかったんだ。奴らは最悪だったね。

理想的にはどの程度のスピードでリリースしたいと思っていますか？

理想的には1カ月に1枚だな。去年は2月から7月にかけては2週間に1枚が理想って言ったんだ。リリースが多かったからな。でも今の理想は、2月から7月は1カ月に1枚だ。今年は良い内容だと思って、リリースすべきだって感じたから1月にもリリースした。で、8月はオフにして、9月から12月まではまた1カ月に1枚。これが俺のやりたいペースだ。今年は10月にアルバムをリリースしたい。アルバムは毎年3月と10月に出せたらなと思っている。 

レーベルに所属しているアーティストは全員制作に取り組んでいる。俺は奴らを叱咤激励しているんだ。ただ12インチシングルをリリースするだけはしたくないからな。そしてアルバムはアルバムとして成り立たなければならない。Goldieの『Timeless』みたいな作品さ。『Timeless』はジャングルというジャンルを必要としていなかった。ジャングルが『Timeless』を必要としていたんだ。あのアルバムは独立した存在で、シーンなんか必要なかった。何も必要なかったんだ。素晴らしかったよ。マスタリング、パッケージ、プロダクション…。あれが俺たちのやりたいことだ。あの質の高さを持って進んでいきたい。

Swamp 81をスタートさせる前から美学的な意味でのレーベル全体のイメージは持っていましたか？

ああ、当然ね。15、16歳位の時からそういう遊びをしてたからな。俺がガキの頃は、どうやってレーベルをやるのかって想像したり、真似事をしたりしていた。少人数でグループを作ってさ。俺とMala、Coki、それにPokesでよくハウスパーティーをしたね。俺がDJで奴らがMCだった。カタログナンバーなんか作って置いちゃってさ（笑）。

基本的に俺はGoldieを目指してたんだ。90年代のポップカルチャーは俺にとっての敵だった。Radio 1（BBC）も敵だった。ありとあらゆるポップミュージックや流行が敵だった。自分のシーンが全てだった。俺はジャングルとドラムンベースにドップリだったから、ある意味Goldieが俺にとってのポップスターだった。彼は独自のグラフィティとドラムンベースを持っていた。あの90年代中期から後期にかけてのシーンで図抜けていたよ。彼がキングだった。それが俺のやりたいことさ。DJして、制作して、自分のレーベル、そして最高のアートワークを手に入れたい。だから俺の頭の中では音楽を始めた時からレーベルを運営しているってわけさ。DMZが最初のレーベルで、このレーベルを通じて色々な問題を解決して、どうやって運営していったらいいのかを理解したんだ。

具体的には何を学んだのでしょう？

最初はとにかく他人に邪魔されないようにするってことだった。自分が新人だった場合は、周りは「へぇ、新人か」ってなるけど、そこを「違うぜ。バカにするな」って言わなきゃいけない。あとは、リリースはそれぞれ独立した存在だってことだな。だから各リリースをありのまま受け入れるってことだ。一番勉強になったのは、全てがダメになる可能性があるってことを意識することだ。アナログ専門のレーベルをやっていたら、全てがダメになる可能性がある。一瞬で全てがダメになるのさ。

最後にあなた自身のトラックについて伺います。最後にリリースしてから数年経っていますが、今はどういう気持ちなんでしょうか？

今はここ数年の中で初めていい状態にあると言えるね。かなりの数を制作してる。誰かに聴かせるのもここ数年ためらっていたけど、昨日の晩に何曲かをBoddikaに聴かせた。何曲かはかなり気に入ってくれてたな。今は自分の立ち位置を見つけるのがかなり奇妙に感じている。何故なら俺はもうBPM140の世界には戻りたくないって思ってるけど、そういう曲も今数曲手掛けているからな。ストレートなハウスをやっても気味が悪いから、やりたくない。多分違うって感じるだろうし、それは誠実さに欠けるしな。そういう曲だけで1日中DJするのは問題ない。ただ自分で制作するとなると違う。

Swamp 81が落ち着いてきた時に、何が起きているのかがもう少し見えてくるようになって、俺が音楽で何をしているのかってことが見えてきた。俺が音楽を始めた時は22とか23歳位で、そこからずっとノンストップに世界を回ってきた。そうなると沢山のブッキングがあるし、やらなきゃいけないことが沢山あるけど、いつも大抵のものから距離を取れていたのはラッキーだった。自分の意思決定については本当に満足している。当時俺は何で音楽を作っているのかわからなかったけど、独立した立場にいたから、自分のことは自分で決めることができるし、今は自分が自分に対して何を求めているのか、自分に何が必要なのかが理解できている。それがこのレーベルだ。最近だともうアンダーグラウンドって言葉はふさわしくないな。アンダーグラウンド自体が存在しない。でもヴァイブとしてはその感じさ。新しい音楽、新鮮な音楽、そしてシーンに対する考えを持っていて、それ以上は求めないっていう姿勢さ。俺は別にポップスターになりたいわけじゃない。俺は色んな層にアピールしたいわけじゃない。そんなものはどうでもいい。俺はただ凄いレーベルをやりたいだけで、そのレーベルを成長させたいだけだ。いつの日かWarp Recordsみたいにしたい。XLでもいい。基本からやっていって、この音楽に対する独自の視点を持てるようになりたいね。