Kalkbrenner へのインタビューが実現するまでには、大分長いことかかった。彼はRAのベルリンのオフィスから一本通りをはさんだすぐ向いに住んでいるので、なんだか奇妙な話ではあるが。私は、予定時刻の５分前にオフィスを出た。そして、４分前に着いてしまった。ドイツで最も有名なテクノアーティストにインタビューを試みると、こういうことが起こるのである。

私は最初にベルリンに来たとき、Kalkbrenerのものすごい人気に気付かされた。いつだったか、BPitchのスタッフである女性が自分の携帯電話から、Kalkbrenerの不調によりその夜のギグがキャンセルになるかも知れないということをツイッターに投稿しようとしているのを見かけたことがあるが、そのときの彼女は、もうほとんど脅えていると言ってもいいような風情だった。「あの映画が公開されてからは、もう.....。」と彼女は嘆息した。冗談を言っているのではない。公開から数年が経つ映画、『Berlin Calling』は、ベルリンの映画館で未だに上映されている。そして、映画のサントラと、その中のヒットチューンである"Sky and Sand"によって、そのプロデューサーは自身がかつて夢見た以上の高みへと押し上げられたのだ。

これによって、それまでのホームであったBPitchから離れて自身のレーベルを設立する必要があると感じるに十分なほど、彼はビッグな存在になった。その彼自身のレーベルからの最初のリリースは、ヨーロッパ中の膨大な数のオーディエンスをとりこにした2010年の彼のライブ・ドキュメンタリーDVDとなる予定だ。このリリースに先駆け、私は昨年終わりごろ、Kalkbrennerに話を訊いた。

あなたはどこで育ったのですか？（現在Kalkbrennerが住む）ベルリンのミッテ地区の周辺ですか？

僕はベルリンのLichtenbergで育ったんだ。東西ドイツ再統一のときは、13歳だった。だけどベルリンの壁崩壊のあと、Lichtenbergはまだ東ドイツのままだった。僕がもっと若かったころ、僕らが遊んでいた辺りには、本当にさまざまな種類の人がいた。スキンヘッドの奴らもいたよ。

あなたはどこでライブを始めたのですか？

僕らは、13〜17歳くらいの奴らが平日に遊びに行ったり、ビリヤードをするような若者向けのクラブでライブを始めたんだ。ベルリン市内にある４つか５つの学校の生徒たちが集まってたよ。夕方６時から深夜までオープンしてるんだけど、僕は夜１１時には家に帰らないといけなかったんだ。僕は当時まだ15歳で、母親が門限を決めていたからね。

DJはやっていたんですか？

やってたよ、 Sascha Funkeと一緒にね。僕らは、Beneluxからリリースされたレコードをよくかけてたな。Underground Resistanceも好きだったよ。URのレコードって、片面リリースだけで、裏面は文字とかいろんな情報がただ刻まれてるだけだったんだけど、僕らはその不良っぽい感じに憧れてたんだ。1992年から1997年のリリースについては詳しいんだけど、それ以降はそうでもないかな。

単に興味が無くなってしまったのですか？

その通りだよ。URのレコードたちは僕をテクノ畑に連れて来はしてくれたけど、僕が本当にプレイしたいものではなかったんだ。

一番最初に買ったマシンはなんですか？

僕らはいろいろ人から借してもらってたんだ。たとえばローランドの高価なサンプラーとかね。で、それをAmiga 500のトラッカープログラムと繋げたりしてたんだけど、それがすごく気に入ってね。それで結局は、Amiga 4000 Turboに落ち着いたよ。あとプログラムEQみたいな機能がついた性能のいいミキサーも持ってたから、もう何でもかんでも録音してたんだ。2001年にAbleton Liveに完全に切り替えるまで、そんなことを何年もやってたよ。今は、Liveを使って演奏するときは実際、同時に音楽を作っているとも言えるね。だからすべてがオープンで、新しいやり方でアレンジができるんだよ。

変化への欲求はありますか？つまり、常に新しいことを追求しているのでしょうか、それとも今のセットで十分満足しているのでしょうか？

今のセットで十分満足しているよ。僕はついに自分のセットに出会ったんだ。ここに辿り着くまでに数年かかったんだけど、これこそが僕のセットなんだ。

"なんて素晴らしい人なんだと人々に騒ぎ立てられると、人はアーティストとしては堕落してしまう。"

そのセットのどこがそんなに気に入っているのですか？

僕が長年やってきたことがそのまま出来るっていうところだよ。まずスタッフに、ミキサーをくれって指示するだろ、それで、インタフェースとケーブルを介したマシンとコントローラーをうまいこと繋げて、そしたら電源を入れて、そのセットの16個のインとアウトを使いこなすわけさ。
なんでそのやり方が好きかって言うと、たとえ僕が同じ曲を同じ順番でかけても、絶対に同じようにはならないからさ。何一つ記録されないんだ。すべてがセッション・ビューひとつに収まっていて、ステージ上でアレンジ出来るのさ。

あなたが楽曲のリリースを始めた経緯について教えていただけますか？最初のトラックが出来上ったとき、誰かに送ったのですか？Saschaにはあげたのですか？

Saschaとは一緒に住んでいて、それで一緒にやり始めたのさ。Ellen（Allien）とは、実はレーベル自体よりも長く続いているBPitchのパーティーで知り合って、それで彼女が話を持ちかけてくれたんだ。実際、あっという間の出来事だったよ。彼女は僕らのことが気に入って、『レコーディングしてるの？それなら、そのレコーダーを買い取って、もっと何かやってよ』って言ったのさ。一ヶ月後に彼女はまたやって来て言ったんだ、『うん。いい出来ね』ってね。

それは何か特別な事のように感じましたか？それとも自然な成り行きという感じでしたか？

分からないな。ただ、楽曲をリリースしたり、いくつかのパーティーにブッキングしてもらえることはすごいクールなことだと思ったんだ。と言うのも、僕はその前はライブショーみたいなところでやってただけだから。だけどせっかくベルリンにいるんだから、何かリリースしなくちゃね。それは今でも同じことだよ。

ですが、あなたはもうそんなにたくさんリリースをしなくてもいいポジションに到達しているのではないですか？

たった今のこの瞬間だけはね（笑）。これは特殊な状況だよ。こういう種類の音楽のアーティストにとって、そんなにしょっちゅうあることなのかは分からないよ。やりたいことは何でも出来るし、すごい贅沢な感じだよ...。

それは危険なことなのでしょうか？

うん、危険なことだね。

あなたは自分がここまでの地位に上り詰めると予想していましたか？ここ１年くらいで、あなたは自分のキャリアを手中に収めてしまったように見えるのですが？

僕は自分自身がいいと思えるセットだけをプレイしたいんだ。自分の望むキャリアを手中に納める方法は、それしかないよ。

BPitchを離籍したとき、不安になりましたか？

レーベルを離れた時は、希望に満ち溢れてたよ。正しい選択だったね。

BPitchでもすごく成功していたように見えますが。

成功してたよ。でも、クラブシーンでは違ったんだ。2010年にやったショーは、実際は僕がプロデュースしたんだ。僕がひとりでいろいろ気を配って、プランを見て、その他諸々のことをやって、それからやっと出て行ってショーで演奏したんだ。あれはクレイジーだったよ。

今、あなたにはやるべきことが更にたくさんあるんですね。クラブに行って、電源を入れて演奏する前に。

実は、こういう感じのストレスは好きなんだ。いつも気分よくやってるよ。たとえば、ベルリンでのArena Showはほかのエレクトロニックミュージックのイベントの３倍も大きいんだ。だから、たくさんのスタッフを雇った。責任を感じたよ。

映画とは最近は距離を置いているのですか？

そうだね。まぁつまりは、Berlin Calling ツアーっていうものはないよ。どのブッキングについても、僕のマネジャーははっきりと、これは『Berlin Calling』っていう名前がついたり、映画に出て来るフライヤーが使われるパーティーではないって断言してるよ。僕らができることはそれだけ。どっちにしたって僕にはコントロールし切れないことがたくさんあるんだ。こういうことわざがあるだろう。『心の底では、自分が変えうることは変える勇気を持つことを望んでいるが、同時に、変えられないことに介入しないだけの辛抱強さを持つことを望んでいる。そして、そのふたつを区別するだけの賢明さを持つことを望んでいる。』ってね。

新しいアルバムを制作しているんですか？

まだだよ。明日から南アメリカに行くから、戻って来たら時間を作りたいと思ってるよ、というか作らないといけないんだ。

何故ですか？

なぜって、アルバムと、それと同時公開された映画と、このすべてのツアーの後で、さらにDVDまで出て、今こそライブを控えてアルバムを作るタイミングだからさ。疑問の余地はないよ。

やりたいことについてたくさんのアイデアがありますか？それともまずは手をつけてみて、何が起こるか見てみる感じですか？

いや、僕は...、Self みたいなものにしたいんだ。同じようなサウンドにしたいというわけではないんだけど。

何故そのアルバムなのですか？

なぜって、それは僕が作った唯一の本当のアルバムだからさ。僕はやりたいことはなんでも出来るから、メジャーなレーベルの人たちは、たとえお金にならなくても、ラジオ番組でもなんでもいいから、とにかく僕を彼らのポートフォリオに入れておきたいんだよ。レーベルマネジャーがお洒落なアフターパーティーに出かけて行く目的は、Scooterを自分らのポートフォリオに入れておきたいからっていうだけじゃないんだ。僕は何かそんな感じの存在になってしまって、実際やりたいことは何でも出来るから、本当のところまた、ちょっと廃れた感じの、でも質のいい、リスニング用のテクノのアルバムを作りたいんだよ。Self はそれが上手くいったアルバムなんだ。全体がひとつのセッションの中で作られたように聴こえるんだよ。

制作にはどのくらい時間がかかったんですか？

はじめのアイデアの段階からってこと？そうだなぁ...９ヶ月かな？

じゃあ、すごく作業が速いっていうわけじゃないんですね。

僕は作業が速いと思うよ。って言うのは、僕は人生も楽しみたいし、いつもそうしてきたんだ。僕くらいめったにスタジオにいないアーティストって、あんまりいないと思うよ。

なぜそう思うんですか？

僕はすごく能率的になったんだ。自分がスタジオでの色んなごちゃごちゃを正すことができるってことを誇りに感じてるよ。知ってるだろ、もっと若かったとき、君はそこで10時間もなんか適当にやっていて、それで『そう！これだよ！これを録音しよう！』ってなるんだ。でも最近は僕は自分がやりたいことを考えて、それでちゃんと座って実際にそれを作るんだ。

"ベルリンは決して定まることがないんだ。
いつも、何か新しいものになろうとしてる。"

一日中スタジオにいるよりもむしろ人生を楽しみたいと仰っていましたが、最近の趣味はなんですか？

政治や歴史についての本を読むのが好きなんだ。ヨーロッパの政治史が好きだね。

最近読んだ本は何ですか？

今、Jonathan Franzenの『Freedom』を読んでいるよ。彼の『The Corrections』も読んだ。まだ読み始めたばかりだけど、彼はいいんじゃないかな。彼は現代のアメリカの小説も書けるんじゃないかって思うよ。『The Corrections』を発表したあと、彼が９年間も自暴自棄みたいになっていて、自分が書いたものを全部燃やしちゃったって読んだよ。そのあとで...ジャーン！この新しい本というわけさ。

あなたは自分とFranzenの間に、何か潜在的に似ている部分があると思いますか？あなたにも、こういう作家が突き当たる障壁のようなことが起こりうると思いますか？

いやいや。これは作家にとってはよくあることだよ。レコードをプロデュースするときにもあることなんだ。絵画とか彫刻みたいなアート作品とかはまた違うんだ。そういうアートとかは、そんなにはっきりしたものじゃなくて、もっと変化するようなものだろう。ライブで演奏している時にしても、最後の音が消えれば、ただ空になったビールのボトルが残るだけさ。こういうのとは全然別のことなんだ。ライブなんかは、結果はあんまり残らなくて、演奏したら消えちゃうけど、分かるだろう、文字は永遠に残るんだよ。

レコードも同じさ。レコードと本。音楽でさえ、それを聴く人々には、思っているよりもずっとたくさんの違った方法で届くんだけど、目に見えるものの場合はきっともっと色んな方法で届くんだろうと思うよ。なぜって文字っていうのはより露骨だし、言葉はより的確だからさ。インターネットはとくにそうだね。インターネットは決して帳消しにしてくれないし、決して忘れてくれないんだ。

最近DJ Magを読んでいて、トップ100にランクインしたDJ全員に「あなたは何で有名なんですか？」と質問しているのを見たんですが、あなたは、それは（映画中で履いている）あなたの金色の靴だと言っていましたね。

そうだね、なんでだか僕はその靴が好きで、いつでも履けるようにたくさん持ってるんだよ。それでDVDのあらゆるところに登場してる。だけど、このことについてDJ Magが書いていたようには書かないでね。あのみじかい質問はもう済んでて、おかげで雑誌のページも埋まってるんだしさ。

あなた以外の方たちはこの質問にとても真面目に答えてらしたので、私は面白いと思ったんですけどね。それで、あなたの答えは真面目じゃなかった。あなたは今や、それなりのアーティストであるように見受けられるのですが、あなたはそういう感じに振る舞っていないので。

僕は、こういうバカげたこと全部に対して、面白がって距離を取っているんだ。なぜって、分かると思うけど、そんなの真実じゃないからね。僕はテクノのレコードを作っているだけなんだから、みんなは僕が通り過ぎたってセレブのお出ましかなんかみたいに騒ぐことないんだ。それにそもそも、たとえ本物のセレブが通りかかったって、そんなふうに騒ぎ立てる理由なんてどこにもないんだよ。自分が、若者たちのいろんな希望やなんかを映し出すための大きなプロジェクターになるってわけさ。騒がれるのは、その対価なのさ。みんなが僕のことを好きで、僕というスクリーンにそれぞれ映したいものを映して、その映し出したものを好きになる。そんな感じさ。
君はなんて素晴らしい人なんだと人々に騒ぎ立てられると、人はアーティストとしては堕落してしまうと思う。こういうことが起こってしまったら、もうそれまで、バイバイさ。僕の話をしてるんじゃないんだ。だって実際に、ほとんどの人は僕のことを知らないからね。見てのとおり、僕はめちゃくちゃメディアに露出してるけど、そのおかげで裕福にも有名にもなった。それが勝利の対価ってやつで、メディアにはみんながぼくのライブで踊っている場面を撮る権利があるんだ。彼らには、Paul Kalkbrennerのイメージを好きなように扱う権利があるんだ。

じゃあ、Paul Kalkbrennerのイメージって何なんでしょう？

分からないね。

では、あなたが映し出しているものはなんなのですか？

僕自身は何も映し出しちゃいないよ。分かっているのはただ、人々が僕に何かを映し出してるってことだ。ひとつのイメージじゃなくて、1000個の違ったイメージをね。ある人はこれが好きで、他の人はそれが好きで、また別な人はあの映画を完全に誤解して、アドバイスかなんかだと思っている。ベルリンに行ってたくさんのドラッグをキメることがクールだと思ってて、だから僕のライブに来て、『ドラッグをキメるのが好きです』とか言ってくるんだ。
僕には、彼らがどう思ったかとか、あの映画の中に何を見出したかについてジャッジする権利も時間もない。ほとんどの人たちは、僕の金色の靴と、ステージ上でいろんな曲をプレイしているところを観ただけなのさ。だから、たとえ彼らがすごく僕に近づいたように思ってても、実際は、僕らがここまでならいいよって許したところまでしか近づいてないんだ。僕は、DVDを観ることさえ出来なくてね...。新しいオープニング・シーンを編集しなきゃならなかったんだけど、DVDを挿入したら、はげ頭でひげ面の男が"Altes Kamuffel" をプレイしているのを観て、すぐに止めたよ。こういう作業を手伝ってくれる素晴らしいチームがいるんだ。m-cadrageで全てを運営しているMax Penzelっていうヤツなんだけど、いつもクレイジーで、彼はもうかなり長いこと、やり過ぎっていうくらいこの作品と関わり続けてるんだよ。

じゃあ、精神病院に行く必要があるのはむしろ彼で、あなたは完全に正常なんですね。

いや、彼にはただ休暇が必要なだけさ。信じられない程ハードに働いてたし、よくやってくれたよ。

"レコードを3000枚売るか300枚売るかって言ったら、
そりゃ3000枚の方がいいに決まってるよ。"

あなたはこうした色々なことについてとてもリラックスして構えているようですね。

そうだね。アンダーグラウンドがどうのってことについては...つまり、誰も、お金持ちだけどもう誰からも尊敬されないようなコマーシャルなヤツにはなりたくないだろう。だけど、レコードを3000枚売るか300枚売るかって言ったら、そりゃ3000枚のほうがいいに決まってるよ。だってみんなに自分の音楽を聴いてほしいし、そうじゃなかったら、ただ趣味で音楽を作ってることになっちゃうからね。もしそうしたくないんだったら、できるだけたくさんのレコードを売った方がいいだろう。そしたらみんなも、コマーシャル路線に傾かずに多くのレコードを売るっていう考え方に賛成してくれるようになるさ。

僕は今まで、誰かに自分の音楽を送ったこともないし、誰か他の人に自分を売り込んだこともないんだ。いつも、来るもの拒まずっていうスタンスでね。それで上手くいくんだよ。何にも圧力をかける必要はない。僕は自分のスタッフを信頼してる。エージェントは僕のことを理解してくれてるしね。思うんだけど、エージェントとアーティストの間の会話とかeメールとか電話のやりとりの80％くらいは、「そうですね。じゃあ私はもう行かなきゃいけないので。じゃあこれはこうしてああしましょう。」みたいなものだよね。僕のエージェントはちゃんとプランを知ってるし、どうすればいいか分かってるから、僕はこういうことをする必要はないんだ。大きいツアーの翌週末は、350〜400人くらいのクラブでブッキングするべきだって分かってるのさ。まあ、そんなオファーの98％を断ってるけどね...。

こういうオファーをもらえるということは、ほとんど夢みたいなものですよね。

そうだね。でも、この状況を自分で築き上げたんだって思うのはいいことだよ。僕は東ドイツ出身だから、ベルリンの壁崩壊のときは、家族はあんまりお金持ちじゃなかった。今こういうことができるのは、東西ドイツ統一のおかげが大きいよ。そのことについては、ずっと感謝してる。僕の人生のターニングポイントだったんだ。

ベルリンの壁崩壊の後、一番最初にしたことは何でしたか？

父親がマクドナルドに連れて行ってくれたんだ。それで、たしか１〜２マルクしか持ってなかったんだけど、ビッグマックは3.5マルクだったんだよね。だから、僕らはかわりにただのハンバーガーを食べたのさ。ハンバーガーの包み紙を家に持ち帰ったのを覚えてるよ。

それは面白い話ですね。ベルリンは、明らかに東西統一後に変わりましたよね。

1999年以降はずっと今みたいな感じだって言う人もいるけど、それは違うね。今この瞬間も、ますます変化してるよ。ベルリンは決して定まることがないんだ。いつも、何か新しいものになろうとしてる。ほかにもこういう街はたくさんあるけど、ベルリンはとくにそうだよ。

引っ越そうと考えたことはありますか？

2006年に、フランスに8ヶ月住んでいたよ。楽しかったけど、でも今はここにいたいかな。

なぜフランスに引っ越したのですか？

その前の年の冬が、耐えがたかったんだ。２ヶ月間、ずっとマイナス20℃とかだったんだよ。だから、2006年の10月から2007年の５月まで、Saschaと一緒にフランスに住んでたんだ。

今でもSaschaとはよく行動を共にするのですか？

いや、今はそうでもないね。だけどそれって言うのは、大抵BPitch絡みの理由なんだ。僕はBPitchでは、僕がやりたかったような大規模なことが出来るとは思ってない。あのレーベルでは、そういうことはしないんだ。

BPitchでは大規模なことは起こりえないと思ったのですか？

起こらないね。あのレーベルはいつでも、あそこなりのやり方でやってるんだ。僕は自分のやり方でやるさ。もしかしたら、恋愛関係みたいなものかも知れないね。と言うのも、もう10年の付き合いになるんだ。彼らのことが嫌いっていうんじゃないんだよ。会えば、『やあ、元気？』って挨拶するしね。いろんなことについて『さあ、次に進もう』って思う時もあるってことさ。

あなたはサッカーの大ファンだそうですね。

マニアと言った方がいいね。ワールドカップのためにオフを取って、その間はギグを入れなかったんだよ。32種類の旗を全部買って、試合中スクリーンの前で左右に振ってたよ。スコアボードやらなんかも全部用意してね。

かなり入れ込んでいますね。試合は大人数で観ていたんですか？

実はそれが、僕が今の家に引越した理由なんだ。ここだと、10〜15人くらいで快適に観戦できるからね。結果にはガッカリしたけど、でもドイツチームはいつも首尾よくプレイするから、誇りに思ってもいるよ。準決勝まで行ったのは12回目だったんだ。ドイツチーム抜きだったら、ワールドカップは退屈なものになってたと思うよ。

あなたはバイエルン（FC バイエルン・ミュンヘン）のサポーターなんですよね？なぜそのチームがお気に入りなのですか？

東ドイツでは、CMが多すぎるからって言うんで、あんまり子供にTVを観せてくれないんだ。精神が乱されるってわけさ。だから僕らは、いつも友達の家とかそこらで Bundesliga（サッカー、バスケットボールなど、ドイツ国内スポーツのトップリーグ）を観てたんだ。それで、80年代の半ばに、バイエルンはゴールキーパーとしてPfaffを、それから Lothar Matthäusを入れたんだ。あのチームを一度観たら、もうとりこだよ。